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MURASAME

[452]  あいじ  2007-05-25投稿
鬼門?

「これは?」
暖かい縁側。幸司が手に持った林檎を少女に見せる。
「りんご?」
少女がつたない言葉で答えた。幸司はにっこりと笑うと少女の頭を撫でた。
「よしよし…じゃあ次は…」
「…何やってんだ、お前は…」
幸司が次の果物をだそうとした時、呆れた声が聞こえた。
「砂羽、こいつは?」
幸司がすかさず声の主を指差す。砂羽と呼ばれた少女はしばらく考えていたが、閃いた様に明るい笑顔で言った。
「うま!」
「…天馬だ…」
天馬が溜め息を吐くように訂正した。
彼女の名前は一条砂羽。長い間幽閉されていたせいか、初めは言葉を全く喋ることが出来なかった。幸司の教育の賜物か、少しずつ覚えてはいるが、まだまだ怪しい。
「うーん…まぁ間違ってないけど…」
幸司が笑いをこらえながら言った。砂羽は間違えたのが気に入らないのか、頬を膨らませる。
「お前…もしかして、朝からずっとやってんのか?」
「おう、言葉ぐらい喋れないと不便だからな」
幸司が新しい果物を取り出そうとするのを見て天馬は頭を押さえた。
「まぁ…悪いことではないか…」
天馬はそういうと縁側に座り、置いてあった林檎を口にした。


太陽が沈み始める。暗い夜を前に太陽は最後の輝きを見せていた。
そんな夕暮れと入れ替わるように二つの影が現れた。
「ねぇ、あそこにはなにがあるの?」
影の一つが鬼部大社を指差し言った。
「そう…あそこには面白いモノがいる…きっと楽しいことが起こるさ…」
大きな影が優しく言った。小さな影が笑う。
「私を殺してくれるかな?」
「さぁ…?」
曖昧な微笑みを浮かべ影は言った。
「もうすぐ、闇が全てを支配する。俺達の時間が始まる…そうすれば…」
闇は静かに嘲った。

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