ナイト・オン・ドラグーン【108】話『朱き鎖』
(すまない…”アデル”永いこと待たせて…)
レオンは”アデル”と言った朱き竜に触れようとした。
『おい!お前っ!その竜から離れろ!!』
リリーナが叫び、レオンは黙って振り返る。
朱き竜からまがまがしいものが感じとれたのだ。
レオンは向き直り、アデルを見た。
朱く鱗に覆われたその姿は18年前と何一つ代わらない…
その背に乗り、空を翔けたあの時も…
羽ばたく翼の力強さも。
共に戦い、同じ痛みを分かち合い…自分に代わって犠牲になってくれた友を。
『さぁ、アデル…共に行こう。俺とお前の旅は始まったばかりだ』
そして、レオンは再度アデルに触れようとする。
だが…
『貴様……。何奴?』
アデルが低く唸る。
レオンの横顔に驚愕が走るのをリリーナは見た。
『人間…我ヲ欺イタ…我ヲ…我ヲ!殺ス!殺ス!殺ス!!!』
朱き竜が吠えた。
レオンは動こうとしない。
『おい!』
リリーナがレオンの腕を引っつかむ。
『逃げるぞ!この竜は暴走してる!早くっ!!』
『許サヌ…人間殺ス!!』
アデルが炎を吐き出す。
次の瞬間、リリーナは突き飛ばされ地面を転がった。
体を起こすと傍らでレオンが同じように起き上がったとこだった。
『お前…ぼくを庇ってくれたのか?』
不意にアデルが翼を広げた。
咆哮を一つ上げ、天空に炎を吐き出す。
それが火柱となってあがる。
突風が舞い、アデルは空中へと羽ばたく。
レオンが追い掛けるように手を差し延べたが、無論届かない。
『滅ビヨ…焼き尽くしてくれるわ…』
憎悪の塊がいっきに膨らんだ火炎を吐き出した。
朱き竜”アデル”憎しみの暴走が始まったのである。
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