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ナイト・オン・ドラグーン【108】話『朱き鎖』

[203]  みるく  2007-05-27投稿

(すまない…”アデル”永いこと待たせて…)

レオンは”アデル”と言った朱き竜に触れようとした。


『おい!お前っ!その竜から離れろ!!』

リリーナが叫び、レオンは黙って振り返る。

朱き竜からまがまがしいものが感じとれたのだ。



レオンは向き直り、アデルを見た。

朱く鱗に覆われたその姿は18年前と何一つ代わらない…

その背に乗り、空を翔けたあの時も…

羽ばたく翼の力強さも。

共に戦い、同じ痛みを分かち合い…自分に代わって犠牲になってくれた友を。


『さぁ、アデル…共に行こう。俺とお前の旅は始まったばかりだ』


そして、レオンは再度アデルに触れようとする。

だが…

『貴様……。何奴?』

アデルが低く唸る。
レオンの横顔に驚愕が走るのをリリーナは見た。

『人間…我ヲ欺イタ…我ヲ…我ヲ!殺ス!殺ス!殺ス!!!』

朱き竜が吠えた。

レオンは動こうとしない。

『おい!』

リリーナがレオンの腕を引っつかむ。
『逃げるぞ!この竜は暴走してる!早くっ!!』

『許サヌ…人間殺ス!!』
アデルが炎を吐き出す。

次の瞬間、リリーナは突き飛ばされ地面を転がった。

体を起こすと傍らでレオンが同じように起き上がったとこだった。

『お前…ぼくを庇ってくれたのか?』

不意にアデルが翼を広げた。

咆哮を一つ上げ、天空に炎を吐き出す。


それが火柱となってあがる。

突風が舞い、アデルは空中へと羽ばたく。


レオンが追い掛けるように手を差し延べたが、無論届かない。



『滅ビヨ…焼き尽くしてくれるわ…』

憎悪の塊がいっきに膨らんだ火炎を吐き出した。

朱き竜”アデル”憎しみの暴走が始まったのである。





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