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航宙機動部隊第二章・38

[446]  まっかつ  2007-05-28投稿
『これまでの帝国の拡大を見ても、必ず兵力で圧倒出来る相手だけに戦争を仕掛けています。ですからエンリケさんがおっしゃった様に、彼等に取って至上の価値は力なのでしょう―だからこそ我々が互角以上の戦力を持った今、外交攻勢で彼等の侵略を退ける、絶好の機会では有りませんでしょうか?』
これには会場の全員が息を呑んだ。
『こいつは面白い!彼等が狂信者ならば神が命ずる限り最後の一人まで戦う。また、もしゲリラやテロリストならば外交何てね、最初から成立しない、寧ろ平和な方が彼等はやりやすい!テンペさんが良いことを言った!軍事国家だからこそ、みすみす全滅何か望まない、艦隊無くなったら彼等は終わりなんだから!』
ゴンツァガ氏はその発想の独創性に興味と評価を示し―\r
『ぐっ…』
陰惨なまでに引き攣ったエンリケの相貌がすかさずアップされ―\r
『ぐははっ、ウケるぜ!パレオスネッツも中々やるなあ』
不覚かつ不謹慎にも、その様子を眺めたリクは茶を片手に笑いころげたものだ。
『下らん仮定を!帝国は軍事・経済が未分離な異常な体制なのは周知の事実!戦って勝たぬ限り、兵士達の求めるポストや恩賞を満足に与えれぬ本質的な欠陥を抱えているのですぞ!?言わば巨大化した宙賊!征服・略奪なくば物理的枯渇に陥り滅ぶのは奴等だ!先程の言は一部撤回しよう。だが、いずれにしても机上の空論に過ぎぬのが確かなのはお分かりでしょうな?』
やはり、ユニバーサルエリートのポテンシャリティは銀河を支配するだけの事は有る。
だが、テンペに伝えたリクの構想には、かくし球が有った!
『全くその通りです。生意気を申してすみませんでした』
テンペ=ホイフェ=クダグニンは、しおらしく頭を下げて、論敵の優越感をくすぐって―見せた。
『否、中々のアイデアだとは思うよ。だが、いささか時期が悪かったな?』
『―ですが』
安心しきった所に、再び向けられた不同意の言葉と目線に見せたエンリケの反応は、純粋に動揺だった。
どうせ一時の勝利なのだろうが、この辺り痛快だった。
宇宙最強の勢力の幹部クラスが、年端も行かぬ少女に手玉に取られているのだから!
(こいつはすげえ、見事な役者振りだ!公社の鼻をあかすとはなあ)
居住区の離れの中で、リク=ウル=カルンダハラは内心喝采とガッツポーズを決めた。

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