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MURASAME

[516]  あいじ  2007-06-04投稿
鬼門?

蝋燭の炎がゆらゆらと揺れる。
その僅かな光は周囲を照らし、暗闇に一筋の道を映し出した。
幻燈斎の真言が静かに、そして厳かに響きわたる。鬼門封じの儀式は今の所順調のようだった。
その様子を蔵王丸は静観していた。そして懐から懐中時計を出し、時間を確かめた。
(まだ夜明けは遠い…今の所異常もないし、このまま無事に済んでくれるといいんだけど…)
蔵王丸はまだ可王出現を知らなかった。僧兵達が本堂を出て既にかなりの時間が経過している。彼らに何があったのか…
「ぎゃあああ!」
凄まじい悲鳴が静寂を突き破った。蔵王丸が顔を上げると巫女の一人が発狂したように叫び声を上げていた。他の僧兵達が沈めようとするも僧兵達もまた、狂ったように笑いだしそのまま果てた。やがてその異変は全ての者に伝染するように広がり始めた。
「何事だ!」
幻燈斎が真言を止め声を荒立てた。しかし騒ぎは収まらない。蔵王丸は不吉な予感を感じ、鬼門へ飛ぶように駆け出すもなかなか前に進めない。幻燈斎も焦りを感じた。
「何が一体何が起きている…」
狼狽する幻燈斎の後ろに影が現れた。鋭い光が一閃したかと思うと幻燈斎は背中からバックリと斬り裂かれその場に倒れた。
「き…貴様は…」
「久しいな幻燈斎…」
「か…おう…」
幻燈斎が息絶える。そして背後の影がその姿を現した。
可王京介だ。彼は刃を揺らめかせると月光に踊った。
周りで狂ったように叫び、笑っていた僧兵や巫女達も次々と果てるように倒れていく。だが、その死体のなか蔵王丸ただ一人が立ち尽くしていた。
「ほぅ…お前も来ていたのか蔵王丸」
「可王…様」
蔵王丸の背中に冷や汗が流れる。可王はそんな蔵王丸の様子をみて嘲った。
「何故、あなたが…?」
「さぁ?」
蔵王丸は懐から呪符を取り出し、可王に向けた。
「不動明王火界呪!」
辺りが炎に包まれる。

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