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恋人未満11

[647]  カトリ  2007-06-04投稿

一週間待っても、哲也からの連絡はなかった。

いつ携帯が鳴ってもいいように、肌身放さずポケットに入れていた。

バイト中も、寝る時も。


それでも、ディスプレイに哲也の名前が出ることはなかった。


哲の声が聞きたい。

哲の笑顔がみたい。

哲に抱き締めて欲しい。


携帯を鳴らした。



留守番電話につながった。


「…哲…私…会いたいよ…」


涙が込み上げる。声が震え、言葉がつまった。


奈緒は電話を切り、握り締める。


哲、お願い。
一度でいいから…



「哲也。今携帯なってたよ。」


シャワーから出て来た哲也に美里は言った。


「ん〜。」


着信 ナオ☆
メッセージあり


「誰から?」


美里は哲也の肩に手を掛け上目遣いで見る。


「お前には関係ない。」


美里をベッドに押し倒す。


美里と何度キスしても、抱き合っても、奈緒の事で頭がいっぱいだった。


その気持ちを紛らすために、哲也は都合よく美里を呼び出した。


「ねぇ。哲也」


行為がすむと、哲也はすぐに服を着る。


「ん?」


「ちゃんと、私と付き合って欲しい。」


「そういう、面倒な事言うなら、もう会うのやめよ。」


最低な男…

自覚していた。


「待って!もう言わないから!!」

美里は慌てて服を着て、部屋を出ようとする哲也を追う。



俺は、奈緒に対しても、同じ事をしていた。


そんな男が…


こんな、最低な男が、今更、奈緒にどんな顔をして、会えというんだ。


哲也は、そのまま、奈緒に、連絡をすることはなかった。




歩いて、10分程の距離の場所に住んでいても、偶然、は訪れなかった。

あれから、ひと月以上経った。


哲也からの連絡を待ち続けた。


奈緒の哲也に対する気持ちが小さくなった訳ではなかった。

それでも、連絡を待つ事は、苦ではなくなっていた。

いつか、また、会えた時、自信をもって、気持ちを伝えたい。


そう考えれば、会えない時間も乗り越えられる気がした。


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