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恋人未満12

[542]  カトリ  2007-06-05投稿
哲也は、合コン三昧の毎日、そして、多数の女とのセックスにうんざりしていた。


結局、合コンをしても、奈緒に似た感じの女を探す。

どれだけ、女を抱いても、満たされる事はなく、虚しさだけが残る。


そして、日が経つにつれて、奈緒の存在の大きさを目の当たりにする。


バイトに向かう途中、奈緒の家の前を通る。


奈緒の部屋の電気は消えていた。


健吾さんと、幸せでいるだろうか。

きっと、そうに違いない。




「おっす。哲也。」


久しぶりに、学校で会った健吾の横には違う女性がいた。


「?健吾さん…何?その女。」


「彼女。」


「って、どうゆう事?」


哲也は、健吾の胸ぐらを掴んだ。


「…おいっ…哲也、もしかして、聞いてない?」


「えっ…?」





夜10時


バイトが終わり、裏口から、出て来た奈緒の目に入ってきたのは、哲也が乗っていたのと同じ車だった。


哲也が好きな、缶コーヒー。


哲也と一緒によく聴いていたCD。

哲也と一緒に買いに行ったスニーカー。


日常のほんの些細な物ごとに、哲也を感じていた。



元気かな。



また、同じ車を見つけた。


「今度は、色まで一緒…。」

溜め息がでる。



車が止まり、運転席のドアがあく。

聴き慣れた洋楽が聴こえた。



「奈緒!」



奈緒は立ちつくしていた。


目の前まで、駆け寄って来た人。


「…て…つ…」


声にならない。

涙が止まらない。

「奈緒??泣くなよ…」


「…本物…?」


「あほ。」


髪をくしゃっと撫でられる。


大きな手。


ずっと、聴きたかった声。


懐かしい、まなざし。


呼んで欲しかった名前。



「哲、私…」


言いかけた言葉を阻むように哲也は口を開いた。



「ごめん。奈緒。」


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