らぶふぁんとむ5
「ここって…。」
歩道の向こうは崖になっていて、柵は腰の高さまでしかない。
足下には知人達からであろう、様々な花束が置かれていた。
宮田珠希の転落現場である。
「葬式には出ないからな、せめて花くらい。」
恵一は、さっき珠希に隠れて買った小さめの花束を取り出す。
「えっと、ここに置いて欲しい?それとも直接欲しい?」
「…持てないですし、置いて下さい。」
「わかった。」
しゃがみ込んで他の物と同様に置く。
珠希は恵一以外からは姿も見えず、声を聞かれる事も無いようで、第三者から見れば同級生が花を添えに来ただけのように見えるだろう。
「…お葬式、学校でやってる、てさっき聞きましたよ。」
「へぇ、校長も粋な事をするもんだ。」
恵一は、崖の下を覗き込む。
「苦しまなかったのか?」
「はい、気付いたら体が浮いて私の身体を眺めてました。」
「そうか。」
恵一は、葬式に出る気は無かった。
生前関わりが無かった、というのも理由の一つだが、ここに、幽霊としてだが珠希がいるのに別れの儀式に参加するのも違和感があったのだ。
「…帰るか、珠希。」
「…。」
珠希が目を見開いて恵一を見る。がそれも一瞬。
表情はすぐに喜々としたものに変わり、恵一に抱き付かんばかりの勢いで近付く。
「はい、帰りましょう恵一くん!あ、もう一つ。」
「?」
「もっかい呼んで下さい。」
「さーかえろー。」
恵一は明後日を見るように踵を返す。
「うわーん、待って下さいよー。けいいちくーん。」
半泣きで追って来る珠希を見て、恵一は苦笑した。
「えー、というわけで、改めてよろしくお願いします。」
珠希は深々と頭を下げる。
「別に他に行くアテがあるなら出てっても構わないが。」
「なんでそーいう事を言いますか…私は恵一くんと一緒に住みたいんです!」
「はいはい、わかったよ。」
恵一としては、自分に思いを寄せてくれている少女と暮らすのに異は無い。幽霊である事を抜かせば。
(まぁ逆に考えれば間違いが起こることも無い訳だが。)
口許に笑みを浮かべて恵一は立ち上がる。
「さて、もう遅いし俺は寝るぞ。」
「は!初夜!?」
「…お前ベッド使え、俺下に寝るから。」
高速で布団を敷いて恵一は眠りに就いた。
珠希の目が悪巧みを思い付いたように細められた。
歩道の向こうは崖になっていて、柵は腰の高さまでしかない。
足下には知人達からであろう、様々な花束が置かれていた。
宮田珠希の転落現場である。
「葬式には出ないからな、せめて花くらい。」
恵一は、さっき珠希に隠れて買った小さめの花束を取り出す。
「えっと、ここに置いて欲しい?それとも直接欲しい?」
「…持てないですし、置いて下さい。」
「わかった。」
しゃがみ込んで他の物と同様に置く。
珠希は恵一以外からは姿も見えず、声を聞かれる事も無いようで、第三者から見れば同級生が花を添えに来ただけのように見えるだろう。
「…お葬式、学校でやってる、てさっき聞きましたよ。」
「へぇ、校長も粋な事をするもんだ。」
恵一は、崖の下を覗き込む。
「苦しまなかったのか?」
「はい、気付いたら体が浮いて私の身体を眺めてました。」
「そうか。」
恵一は、葬式に出る気は無かった。
生前関わりが無かった、というのも理由の一つだが、ここに、幽霊としてだが珠希がいるのに別れの儀式に参加するのも違和感があったのだ。
「…帰るか、珠希。」
「…。」
珠希が目を見開いて恵一を見る。がそれも一瞬。
表情はすぐに喜々としたものに変わり、恵一に抱き付かんばかりの勢いで近付く。
「はい、帰りましょう恵一くん!あ、もう一つ。」
「?」
「もっかい呼んで下さい。」
「さーかえろー。」
恵一は明後日を見るように踵を返す。
「うわーん、待って下さいよー。けいいちくーん。」
半泣きで追って来る珠希を見て、恵一は苦笑した。
「えー、というわけで、改めてよろしくお願いします。」
珠希は深々と頭を下げる。
「別に他に行くアテがあるなら出てっても構わないが。」
「なんでそーいう事を言いますか…私は恵一くんと一緒に住みたいんです!」
「はいはい、わかったよ。」
恵一としては、自分に思いを寄せてくれている少女と暮らすのに異は無い。幽霊である事を抜かせば。
(まぁ逆に考えれば間違いが起こることも無い訳だが。)
口許に笑みを浮かべて恵一は立ち上がる。
「さて、もう遅いし俺は寝るぞ。」
「は!初夜!?」
「…お前ベッド使え、俺下に寝るから。」
高速で布団を敷いて恵一は眠りに就いた。
珠希の目が悪巧みを思い付いたように細められた。
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