かわいいひと
ひなへ。
優矢より。
封筒の宛名と、差出人名を確認したあたしは、平静を装うのを忘れて封を開け、短い文面の手紙を繰り返し読んだ。
『明日、あの公園で会いたい』
手が、足が、震えている。優矢が、ここに来たんだ。
優矢とは、3年前まで付き合っていた彼で、趣味が合って、一緒にいるだけで楽しくて。色素の薄い彼の目が、あたしは大好きだった。
なのに、彼は行ってしまった。3年前の夏、遠い海の向こうへ。
「やりたいことがある。待てとは言わない」
あたしはいらなかったんだ、そう思った。
だからあたしは泣くだけ泣いて、彼じゃないひとと出会って、恋をして、忘れようと決めた。
なのに…
「ただいまー」
いきなり背後のドアが開いた。
「ビックリしたー!ひな、玄関で何してんの」
「アキ!おかえり」
あたしはそう言いながら、手紙を後ろ手にしまった。
「ひなも今帰ったの?」
「うん、遅くなっちゃった。すぐご飯にするね」
「急がないでいーよ」
「うん、ごめん」
そそくさとバッグを置いて、キッチンへ向かう。アキより先に帰ってよかった…。
アキとは1年前から付き合い始め、同棲して半年経つ。
半ば男性不信だったあたしの心を不思議と柔らかくしてくれた人で、何かと外へ引っ張っては、新しい世界を見せてくれる。26歳のあたしより2つ年下だけど、頼りなさを感じたことはない。
安心をくれる彼に、今の揺れる気持ちを知られたくはなかった。
(あたし、サイテー。絶対行っちゃダメなのに)
「ひな、今日のメニュー何」
アキが後ろから抱きついて来た。
あたしは少し動揺する。アキはちょっと勘が鋭いとこがあるから何か感じたのかもしれない。
「ひな、愛してる」
体の芯がきゅうっと音をたてた気がした。
「うん、アキあたしも」
ごめん…。
あたしの気持ちは…。
翌朝、まだ寝ているアキを起こさないように、そっと部屋を出た。
電車を乗換え、公園のある駅まで一本。
優矢の茶色い髪が、今はどんな髪型になってるのか、相変わらずギターを弾いてるのか、あたしのことをなんて呼ぶのか……
優矢、優矢。
「おかえり」
ごめんね、優矢。
「ひな?どうして泣いてるの」
「ううん、なんでもない」
あたしのかわいいひとはここにいる。
「ただいま、アキ」
優矢より。
封筒の宛名と、差出人名を確認したあたしは、平静を装うのを忘れて封を開け、短い文面の手紙を繰り返し読んだ。
『明日、あの公園で会いたい』
手が、足が、震えている。優矢が、ここに来たんだ。
優矢とは、3年前まで付き合っていた彼で、趣味が合って、一緒にいるだけで楽しくて。色素の薄い彼の目が、あたしは大好きだった。
なのに、彼は行ってしまった。3年前の夏、遠い海の向こうへ。
「やりたいことがある。待てとは言わない」
あたしはいらなかったんだ、そう思った。
だからあたしは泣くだけ泣いて、彼じゃないひとと出会って、恋をして、忘れようと決めた。
なのに…
「ただいまー」
いきなり背後のドアが開いた。
「ビックリしたー!ひな、玄関で何してんの」
「アキ!おかえり」
あたしはそう言いながら、手紙を後ろ手にしまった。
「ひなも今帰ったの?」
「うん、遅くなっちゃった。すぐご飯にするね」
「急がないでいーよ」
「うん、ごめん」
そそくさとバッグを置いて、キッチンへ向かう。アキより先に帰ってよかった…。
アキとは1年前から付き合い始め、同棲して半年経つ。
半ば男性不信だったあたしの心を不思議と柔らかくしてくれた人で、何かと外へ引っ張っては、新しい世界を見せてくれる。26歳のあたしより2つ年下だけど、頼りなさを感じたことはない。
安心をくれる彼に、今の揺れる気持ちを知られたくはなかった。
(あたし、サイテー。絶対行っちゃダメなのに)
「ひな、今日のメニュー何」
アキが後ろから抱きついて来た。
あたしは少し動揺する。アキはちょっと勘が鋭いとこがあるから何か感じたのかもしれない。
「ひな、愛してる」
体の芯がきゅうっと音をたてた気がした。
「うん、アキあたしも」
ごめん…。
あたしの気持ちは…。
翌朝、まだ寝ているアキを起こさないように、そっと部屋を出た。
電車を乗換え、公園のある駅まで一本。
優矢の茶色い髪が、今はどんな髪型になってるのか、相変わらずギターを弾いてるのか、あたしのことをなんて呼ぶのか……
優矢、優矢。
「おかえり」
ごめんね、優矢。
「ひな?どうして泣いてるの」
「ううん、なんでもない」
あたしのかわいいひとはここにいる。
「ただいま、アキ」
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