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海の見える車窓1

[343]  2007-06-05投稿
急なことではあったが、嘉代(カヨ)は落ち着いていた。覚悟ならとうに出来ていたからだ。
女手ひとつで育ててくれた母の癌が見つかったのが今から1年以上前。
その時すでに手遅れだったにも関わらず、母は「高校生になるまで面倒見てあげる」と笑顔で言った口約束を守り、嘉代が高校にあがるまで生き続けた。
そして今、知り合いなど誰一人居ない海岸沿いの町に越してきた。とりあえず父からの仕送りはあるので下手なことをしなければ餓死には至らない。
そんな暗いことを汽車の窓に頭をもたれかけていた嘉代は突然の陽光に目を瞑った。
暗い気持ちが一時、吹き飛んでしまった。
陽光は眼前に広がる青い水面に乱反射してまるでダイヤモンドの様な輝きを放っていた。
漁村があり、ここからでは豆粒のように見える人々がせわしなく行き交っている。船も何隻か見える。
嘉代は長い髪をてきぱきと後ろ手で結ぶと、両手いっぱいの荷物を持ち上げて、駅に向かい減速を始めた汽車のドアに向かった。
嘉代は両手でトランクを持ち上げなんとか下ろそうとしたが重くてうまくいかない。しかし、不意に軽くなった。

「嘉代ちゃんだろ?」

頭の上から聞こえたのは若い男性の声だった。

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