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キングダム 9

[388]  るぅ  2006-02-26投稿
翌日早朝6時―\r
腕をくみ扉に寄りかかるロシアンの前に、豪華な馬車が到着した。中から優雅に降りてきたエマが軽く微笑む。
「おはようございます。」
「あぁ。じゃあ行こうか。おい!お前ら!」
「ちょっと待ってぇ〜!」
「サラ。早くしなさいよ。」
「ふぁ〜ねみぃ〜。」
「みなさん忘れ物はないですか?」
「あっ!ジルファ〜俺のおやつどこ!?」
〜バタバタガヤガヤ〜扉の向こう側で続く喧騒を背に、ロシアンはさっさと馬車へ乗り込んだ。続くエマと向かい合って座ると、さっそく煙草をくわえる。「煙草は体に悪いですよ。」
「吸わねぇほうが俺の体には悪いんだよ。」
煙の向こうで苦笑するエマ。真っ直ぐに見つめるロシアンは、いたずらっぽく笑いながら尋ねた。
「俺たちが金持って逃げるとは考えなかったのか?」
「あら、あなたがそんな事するわけないわ。」
「何でそんな事が言える。人間はあまり信用しちゃいけねぇよ?」
「人間を信用してるわけじゃないわ。あなたを信用しているんです。」
「ふん。」
ロシアンが小さく笑う。
「まぁ、着くまで10日はあるんだ。ゆっくり話を聞こう。」
そう言った所で、一同が慌ただしく馬車に乗り込んできた。
「お待たせ!」
「おせぇんだよバーカ。」
「ロンうるさい!」
「ふふ。では行きましょうか。」
エマが言ったと同時にガタンと馬車が動きだした。ロシアンが軽く目を閉じ、さっきチラリと確認した御者を思い出す。目と腕以外はスッポリと布で隠した小柄な御者―男か女か・・それ以前に人間かどうかもわからない。―人間を信用してるわけじゃない―\r
エマの声が頭をよぎった。
(本当におもしろい事になりそうだ。)
満足気に煙を吐き出し窓へ目をやる。
真冬の早朝ということもあり、まだ外は薄暗く重苦しい。
あっと言う間に見慣れた街を出ると、馬車は猛スピードで西へと走りだした。このスピードが続くなら、10日よりは早く着きそうだ。レイラも同じことを考えたのか、お菓子を引っ張り出しはしゃぐサラの向こうからロシアンを見据えていた。その視線に軽くうなずき、再びエマと向かい合う。エマの茶色い瞳の奥を覗くように光る金色の瞳。
「さあ。詳しく聞かせてもらおうか。」
ロシアンの声を合図に静まりかえる車内。一同の視線を一手に受け、エマは形のいい唇をゆっくりと開いた―

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