らぶふぁんとむ8
月曜の朝。自分の通う中学校に向かう恵一。
特におかしな所は無い。あるモノを除いては。
「俺の後ろをふわふわと漂うなよ。気になるだろ。」
「気にしちゃダメです。私は恵一くん以外からは見えないんですから、独り言を言ってると誤解されますよ?」
珠希は両手を前でぶらりと下げて、所謂幽霊のポーズを作る。
「…なら、気になる行動を取るな、って言ってるそばから!」
振り返れば、珠希は道端の野良猫と睨み合っていた。猫には姿が見えるらしい。
「止めないでください!これは私の一世一代の」
「ほれ、さっさと行け。」
珠希の声を無視して猫を追い払う恵一。
「…。」
「なんだよ?」
不満そうに口を尖らせた珠希はそこに立ち尽くす。
「いーえー。なんでもー。」
珠希は不貞腐れていた。
(猫とのケンカを止められたぐらいで何が不満なんだか。)
そんな時、恵一の肩を叩く手が。
「おはよう、恵一。」
友人、日村孝太である。
「孝太か、はよ。」
「珍しいね、まだここにいるなんて。」
遅れてる理由は明らかに珠希である。
当の珠希は恵一の背中や脇腹を無意味につついている。
「ん?どうしたのさ、手を振り回したりして。」
「虫だ。」
即答する恵一。珠希はムッと顔をしかめる。
「私、先に行ってますよ。」
珠希が恵一にしか聞こえない声で言う。
「あ、おい。」
「どうしたの?恵一?」
無論、孝太に珠希の声は聞こえてないし、姿も見えていないので恵一の言動は不審なものだった。
何もない中空に呼び掛けたのだから。
「あ、いや。空が、青い、と。」
「曇ってるよ?」
恵一、かなり迂闊である。
「あー、悪い孝太。俺先行く。」
「ん、なんか用事?」
「そんなとこ。」
恵一は孝太に手を振り走り出す。
先に行っている、と言うことなら珠希は学校にいるだろう。
恵一の脳裏に去り際の寂しそうな表情が浮かぶ。
(あー、くそ、何を気にしてるんだ俺は。)
校内に入り、ひとまず鞄を置くために自分の教室へ入る。
思い切りコケた。入口近くの机二つほど巻込んで。
「ちょ、小野瀬くん大丈夫?」
「貧血でも起こしたか?」
心配するクラスメイトに手を振り、恵一は顔を上げた。
恵一の席には、ちょこんと宮田珠希が座っている。
特におかしな所は無い。あるモノを除いては。
「俺の後ろをふわふわと漂うなよ。気になるだろ。」
「気にしちゃダメです。私は恵一くん以外からは見えないんですから、独り言を言ってると誤解されますよ?」
珠希は両手を前でぶらりと下げて、所謂幽霊のポーズを作る。
「…なら、気になる行動を取るな、って言ってるそばから!」
振り返れば、珠希は道端の野良猫と睨み合っていた。猫には姿が見えるらしい。
「止めないでください!これは私の一世一代の」
「ほれ、さっさと行け。」
珠希の声を無視して猫を追い払う恵一。
「…。」
「なんだよ?」
不満そうに口を尖らせた珠希はそこに立ち尽くす。
「いーえー。なんでもー。」
珠希は不貞腐れていた。
(猫とのケンカを止められたぐらいで何が不満なんだか。)
そんな時、恵一の肩を叩く手が。
「おはよう、恵一。」
友人、日村孝太である。
「孝太か、はよ。」
「珍しいね、まだここにいるなんて。」
遅れてる理由は明らかに珠希である。
当の珠希は恵一の背中や脇腹を無意味につついている。
「ん?どうしたのさ、手を振り回したりして。」
「虫だ。」
即答する恵一。珠希はムッと顔をしかめる。
「私、先に行ってますよ。」
珠希が恵一にしか聞こえない声で言う。
「あ、おい。」
「どうしたの?恵一?」
無論、孝太に珠希の声は聞こえてないし、姿も見えていないので恵一の言動は不審なものだった。
何もない中空に呼び掛けたのだから。
「あ、いや。空が、青い、と。」
「曇ってるよ?」
恵一、かなり迂闊である。
「あー、悪い孝太。俺先行く。」
「ん、なんか用事?」
「そんなとこ。」
恵一は孝太に手を振り走り出す。
先に行っている、と言うことなら珠希は学校にいるだろう。
恵一の脳裏に去り際の寂しそうな表情が浮かぶ。
(あー、くそ、何を気にしてるんだ俺は。)
校内に入り、ひとまず鞄を置くために自分の教室へ入る。
思い切りコケた。入口近くの机二つほど巻込んで。
「ちょ、小野瀬くん大丈夫?」
「貧血でも起こしたか?」
心配するクラスメイトに手を振り、恵一は顔を上げた。
恵一の席には、ちょこんと宮田珠希が座っている。
感想
感想はありません。