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シュゼの伝説

[310]  風秋  2007-06-09投稿
谷を一筋の風が吹き抜けた。赤い山からの冷たい風だ。
赤い山には巨神オフェルが棲み、山からの風は、彼の息なのだ。谷を抜けた風は、竜神ルネルの眠る竜の泉に吹き荒んだ。
その頃、竜の泉から程近い王国シュゼでは、王子の誕生を祝う宴が、盛大に執り行われていた。
王は、王子を抱き上げ、妻や家臣、そして国の民達と喜びを分かち合った。その時、湖で吹き荒んでいた風が、城に向け吹き始めた。まるで生き物のように城に侵入した風は、なんと王の腕から王子を奪い、そのまま吹き去ってしまったのだ。
突然のことに、その場にいた人々は、なにが起きたかわからなかった。
しばらくすると、王妃の泣き叫ぶ声と、民達の叫び声で国は包まれた。

直ちに兵士達が後を追ったが、風は竜の湖と赤い山を越え、消えてしまった。
王子の行方はわからなくなってしまったのだ。
国は深い悲しみに包まれた。

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