僕の声が聞こえるまで?
【どっか行かない?映画観たい。ただし字幕アリの洋画限定☆10時に駅前、遅れないでね】次の日に優羽ちゃんから来たメールはあっけらかんとしていた。安心したようななんだか複雑な気持ちにだった。しかし時計は9時40分。こっちの都合は無視かよと思いながらも顔がにやけている。鏡を見て、自分が気持ち悪かった。ダッシュで駅前に向かった。優羽ちゃんはまたもミニスカートをはいていた。僕はパンツを見せびらかして歩いている女は嫌いだったが、優羽ちゃんは特別可愛かった。好きという気持ちがあるからそう想えるなんて僕はとっくに気付いていた。優羽ちゃんは映画の字幕を必死でおっていた。僕はその横顔を見つめるだけて映画の内容なんてちっとも覚えていない。彼女にささやくように「優羽…」と呼び捨てしてみた。聞こえないのは分かっているのに名前を呼びたくてしょうがなかった。彼女は僕の視線に気付きにっこり笑った。それからの僕らは当たり前の日常のようにデートを重ねた。彼女が決まってオムライスを頼む事も、猫が好きな事も当たり前のように僕の価値観となった。これが目の前の幸せなのか先を見据えた幸せなのかなんて、考えもしなかったし僕には分からなかった。
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