らぶふぁんとむ17
昼休みが明けて午後の授業。
珍しく、いや、初めて珠希が恵一の隣にいなかった。
(何をやっとるんだあいつは。)
恵一の机の上には、ペンが二本置かれたまま。
教師が板書を始めたのを見計って視線を巡らせれば、やや離れた位置の八夜みこの真後ろでうっすらと微笑む珠希を見つける事が出来た。
(…何するつもりだあいつ?)
珠希はと言えば、まず消しゴムを隠した。
ノートに写す途中、間違えたらしいみこが消しゴムを探して首をぐるりと回す。
その間に珠希は机に広がっている教科書を別の教科にすり替える。当然ではあるが、幽霊である珠希の姿は誰にも見咎められない。
ただ一人を除いては。
「!?」
珠希が肩を大きく震わせた。
その寸前に恵一と目が合っていたのである。
恵一は怒っているような悲しいような瞳に珠希を映す。
しゅんとした珠希は、存外素直に全てを元通りにして恵一の元へ戻ってきた。
『ごめんなさい』
片方のペンを掴んでノートの端に書く。
最近は珠希は声を出しているのだが、気まずいのか筆談だ。
『わかればいい』
恵一は何とも思ってない素振りで記した。
みこの方へ目をやれば、一度教科書を変えられた事にも気付かず、消しゴムを見つけて無表情ながらに喜んでいるようだった。
ぼーっとその様子を恵一が見ていると、ノートをペン先が叩く。
『浮気者』
不満そうに見上げる珠希。
恵一は溜め息を吐いてペンを取った。
『オレは浮気なんかしねーよ』
書いて、恥ずかしくなった恵一は消しゴムを掴んだが、珠希はノートのページを変えて上から押さえ付けた。
(くっ!開かねぇ!)
『どけろ』
なぐり書く。
「嫌です!残します!永久的に!」
両手を使う珠希と片手の恵一では、珠希に軍配が上がるだろう。
「…はぁ。」
恵一は、諦めたように小さくお手上げ。
珠希は笑顔で先程のページを見ているのだった。
「ところでタマ。」
下校途中、終始嬉しそうな珠希に声を掛けた。
「…俺は別に誰かと付き合ってる訳じゃないから浮気とかって無いよな?」
珠希は目を点にして固まった。
かと思えば怒った顔で叫んだ。
「恵一くんの鬼畜!」
「やめろ人聞きの悪い!」
照れ隠しで言って返される言葉がそれとは、恵一は思いもしなかった。
珍しく、いや、初めて珠希が恵一の隣にいなかった。
(何をやっとるんだあいつは。)
恵一の机の上には、ペンが二本置かれたまま。
教師が板書を始めたのを見計って視線を巡らせれば、やや離れた位置の八夜みこの真後ろでうっすらと微笑む珠希を見つける事が出来た。
(…何するつもりだあいつ?)
珠希はと言えば、まず消しゴムを隠した。
ノートに写す途中、間違えたらしいみこが消しゴムを探して首をぐるりと回す。
その間に珠希は机に広がっている教科書を別の教科にすり替える。当然ではあるが、幽霊である珠希の姿は誰にも見咎められない。
ただ一人を除いては。
「!?」
珠希が肩を大きく震わせた。
その寸前に恵一と目が合っていたのである。
恵一は怒っているような悲しいような瞳に珠希を映す。
しゅんとした珠希は、存外素直に全てを元通りにして恵一の元へ戻ってきた。
『ごめんなさい』
片方のペンを掴んでノートの端に書く。
最近は珠希は声を出しているのだが、気まずいのか筆談だ。
『わかればいい』
恵一は何とも思ってない素振りで記した。
みこの方へ目をやれば、一度教科書を変えられた事にも気付かず、消しゴムを見つけて無表情ながらに喜んでいるようだった。
ぼーっとその様子を恵一が見ていると、ノートをペン先が叩く。
『浮気者』
不満そうに見上げる珠希。
恵一は溜め息を吐いてペンを取った。
『オレは浮気なんかしねーよ』
書いて、恥ずかしくなった恵一は消しゴムを掴んだが、珠希はノートのページを変えて上から押さえ付けた。
(くっ!開かねぇ!)
『どけろ』
なぐり書く。
「嫌です!残します!永久的に!」
両手を使う珠希と片手の恵一では、珠希に軍配が上がるだろう。
「…はぁ。」
恵一は、諦めたように小さくお手上げ。
珠希は笑顔で先程のページを見ているのだった。
「ところでタマ。」
下校途中、終始嬉しそうな珠希に声を掛けた。
「…俺は別に誰かと付き合ってる訳じゃないから浮気とかって無いよな?」
珠希は目を点にして固まった。
かと思えば怒った顔で叫んだ。
「恵一くんの鬼畜!」
「やめろ人聞きの悪い!」
照れ隠しで言って返される言葉がそれとは、恵一は思いもしなかった。
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