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らぶふぁんとむ18

[210]  あこん  2007-06-17投稿
料理というものは、生活に密着した趣味である。
そんな持論で恵一は台所に立つ。
「タマー、手伝ってくれるかー?」
居間、というか寝室というかワンルームでくつろぐ珠希に声を掛けた。
幽霊がスピリチュアルなテレビ番組を見ているというのもシュールな光景である。
「はーい。」
テレビに集中していた訳でもなく、珠希はすぐに恵一の元へやってくる。
「上に小麦粉が入ってるはずなんだ。」
「なんか高い所から物運ぶ仕事ばかりですね。」
文句という訳でもなく、ぽつりと呟きながら珠希は空中に浮かぶ。
「高所作業に適した体じゃないか。」
鶏肉の下拵えが済んだ恵一は珠希を見上げる。
「そういえば今日はなんなんです?」
「牛乳がギリギリだったからな。ホワイトソースにしちゃって、まずはグラタンにでも。」
ほあー、と感嘆の声を上げながら珠希は小麦粉の袋を引っ張り出す。
「ん?」
「はい?」
恵一が珠希の二の腕の辺りに注目する。
今まで制服を着っ放しだったので見えなかった部分だ。腕を伸ばした事でちらりと覗く。
「…痣?」
というよりは打撲の後か。
「…あー、落ちた時に打ったんだと思いますよ。こんな痣無かったはずですし。」
珠希は制服の袖を捲って自分の左腕を見る。
「…痛そうだな。」
「今は痛くないですけどね。はい、小麦粉。」
「おぅ、サンキュ。…生前の傷って幽霊になってもあるんだな。」
恵一はこの話はここまでにして、ソース作りの為にバターを溶かし始めた。

「おいしそーですねー。」
「…食ってみるか?」
「口に入れた端から床に落ちてもいいなら。」
「じゃ、我慢してくれ。」
大量に作ったグラタンは4つに分けてある。これから数日はグラタン三昧だろう。
「本当に料理上手ですよね。」
「…普通だと思うが。」
「和洋中全てに精通した男子中学生が全国に何人いますか。」
実の所、ロシア料理なども恵一は作れる。他人に作った事はないが。
少し照れくさそうに恵一が頭を掻いて、グラタンにスプーンを入れる。
「やっぱり、食べてみたいですねー。」
チーズとパン粉の焦げた面を見て、珠希は小さく呟いた。珍しく憂いを帯びた表情で。
恵一は、何も言う事が出来なかった。

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