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冥界王子9

[214]  N  2007-06-18投稿
「嫌だね。」

王子は言った。

「鏡の中を選んだのは、あの娘だ。お前の勝手な考えで例外はつくれないね。
言っただろう?
一度死ねば、やり直しはきかないと。」

「…彩にやり直しがきかないなら、あたしには無理なの?彩をこの世に戻せなくても、少しでも彩の為に何かしたい!」

「王子。
聞く事はありません。
ヒトのエゴにすぎません。」
リュクスの言葉が終わらないうちに王子がクスッと魅惑的な笑みを浮かべた。

「あの娘の望み通り、鏡の中に入るのか?」

「…鏡の中には入らない、あたしは生きていたいから。彩を鏡から出してあげたい。」
由香は真っ直ぐに王子のコバルトの瞳を見た。

ふっ、と王子が笑った。
美しい故に妖艶にも見える王子の笑みに由香の心臓は掴み捕られたように苦しくなる。

「…いいだろう。あの娘を鏡から出してやろう。」

「王子…!」
リュクスが慌てた様子で声を上げた。

「小さな人間の娘よ、お前の友人を自らの運命より救いだそう。
その代償としてお前の運命の半分を俺がもらう事にする。」

「え…!?運命の半分?」由香はキョトンと眼を丸くした。

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