らぶふぁんとむ20
「話、って?」
珠希の声に、不穏なものを感じ取って、恵一の声は震える。
「…私は、幽霊です。」
「知ってるよ。」
「一ヶ月前に死にました。」
「うん、知ってる。」
買ってきた指輪の片割れを握り締める。
「…本来なら、私は天国へ送られるはずでした。…天国、のような所へ。」
「成仏する、てことか?」
「…みたいです。…私を連れに来た死神の人に私は言ったんです。好きな人に、気持ちも伝えてないって。」
これは、初日に聞いた事だった。その時は流してしまったが。
「…強い後悔があると、後々問題になる、らしいです。」
恵一は珠希が間を取りながら話しているのに気付いた。
「…どうなるんだ?」
「…人間には、関係ない、って。」
「珠希、そこに誰がいる?明らかに聞きながら話してるな?」
珠希の肩が揺れる。
「…死神の人、です。」
恵一の目には、一切見えない。
「そうか。」
珠希は窺うように斜め後ろを見上げる。そして気付いたように時計を見た。
「…恵一くん。さっきの話に戻ります。死神の人は私に猶予をくれました。期間付きで。」
少し口調を早めて珠希が言う。
「おい、まさかその期間って。」
「一ヶ月です。」
恵一の握っていた手が解け、指輪が落ちる。
「さっき、迎えが来ました。…私は、回収されるそうです。」
もう恵一に、口を開いて言葉を発する気力は無いように見えた。
「…もう、時間です。」
珠希は立ち上がって窓枠に立つ。
「…珠希?」
弱々しくも恵一は音を発する。
「恵一くん、さよならです。」
珠希は笑っていた。涙を押し殺して。
「珠希!」
珠希がいなくなる。
無意識に恵一は叫んでいた。
「恵一くん…。」
「珠希!」
恵一は必死に腕を伸ばす。
窓の外に浮く珠希の姿が、薄くなり始める。と同時に、珠希の傍らに黒いもやのようなモノが現れた。
「…恵一くん、約束してください。」
「何をだ!?」
「会いに行きますから、また来ますから、待っててください!」
「当たり前だ!待ってる!ずっと待ってる!」
二人で叫ぶ。
「恵一、くん、好き、でした!」
珠希が涙を流し、
「…俺もだ!好きだ、珠希!」
恵一は喉が裂けんばかりに叫ぶ。
珠希は笑顔を残して完全に消えた。もやも消えている。
残ったのは、涙を流す恵一と、部屋に転がる指輪だけだった。
珠希の声に、不穏なものを感じ取って、恵一の声は震える。
「…私は、幽霊です。」
「知ってるよ。」
「一ヶ月前に死にました。」
「うん、知ってる。」
買ってきた指輪の片割れを握り締める。
「…本来なら、私は天国へ送られるはずでした。…天国、のような所へ。」
「成仏する、てことか?」
「…みたいです。…私を連れに来た死神の人に私は言ったんです。好きな人に、気持ちも伝えてないって。」
これは、初日に聞いた事だった。その時は流してしまったが。
「…強い後悔があると、後々問題になる、らしいです。」
恵一は珠希が間を取りながら話しているのに気付いた。
「…どうなるんだ?」
「…人間には、関係ない、って。」
「珠希、そこに誰がいる?明らかに聞きながら話してるな?」
珠希の肩が揺れる。
「…死神の人、です。」
恵一の目には、一切見えない。
「そうか。」
珠希は窺うように斜め後ろを見上げる。そして気付いたように時計を見た。
「…恵一くん。さっきの話に戻ります。死神の人は私に猶予をくれました。期間付きで。」
少し口調を早めて珠希が言う。
「おい、まさかその期間って。」
「一ヶ月です。」
恵一の握っていた手が解け、指輪が落ちる。
「さっき、迎えが来ました。…私は、回収されるそうです。」
もう恵一に、口を開いて言葉を発する気力は無いように見えた。
「…もう、時間です。」
珠希は立ち上がって窓枠に立つ。
「…珠希?」
弱々しくも恵一は音を発する。
「恵一くん、さよならです。」
珠希は笑っていた。涙を押し殺して。
「珠希!」
珠希がいなくなる。
無意識に恵一は叫んでいた。
「恵一くん…。」
「珠希!」
恵一は必死に腕を伸ばす。
窓の外に浮く珠希の姿が、薄くなり始める。と同時に、珠希の傍らに黒いもやのようなモノが現れた。
「…恵一くん、約束してください。」
「何をだ!?」
「会いに行きますから、また来ますから、待っててください!」
「当たり前だ!待ってる!ずっと待ってる!」
二人で叫ぶ。
「恵一、くん、好き、でした!」
珠希が涙を流し、
「…俺もだ!好きだ、珠希!」
恵一は喉が裂けんばかりに叫ぶ。
珠希は笑顔を残して完全に消えた。もやも消えている。
残ったのは、涙を流す恵一と、部屋に転がる指輪だけだった。
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