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座敷少女〜一ノ話〜

[565]  Ryu  2007-06-23投稿
2007年8月10日。

午後8時55分。

アスファルトジャングルの東京は夜になっても熱を帯びていてクーラーが故障している敬介に熱気は容赦無く襲い掛かる。

Tシャツとトランクスという格好で敬介は冷やし中華を食べていた。
「蒸し暑ちぃ〜一体何度あるんだよ…?」
うんざりした様にそう呟くと敬介はテーブルに置いてあるリモコンを手に取り、1チャンネルにチャンネルを変えた。

丁度天気予報がやっていて気象予報士が明日の天気について説明している。
「明日の最高気温は36度。最低は29度の猛暑に…」
その言葉を聞いて敬介は深い溜め息を吐いた。
(マジかよ…明日はもっと暑いのかよ…八戸は今頃涼しいだろうなぁ〜)
八歳の時両親を無くした敬介は青森県八戸にいる水産食品の加工会社の社長である父方の祖父に引き取られた。そして今年の4月。都内の大学に通う為に上京してアパート暮らしを始めた。

敬介は冷やし中華を食べ終えると、皿を洗う為に台所へと向かった。
だがその時、首筋の六角形の形をした痣に鋭い痛みが走った。
「痛っ…」
バリン!
皿は手からこぼれ落ち、床に落ちて割れてしまった。この痣はあの日。両親が殺されたあの日に青い眼の少女に刻み込まれた忌まわしき刻印である。
(なんでだ…最近は痛まなかったのに…)
しばらくして痛みが引くと、敬介は立上がり、割れた皿の片付けを始めた。

そしてその時、リビングの床に何かが落ちている事に気が付いた。

それは招待状と書かれた封筒だった。

中には岩手県の金田一温泉の旅館『馬淵館』の一泊分の宿泊券だった。
馬淵館

それは10年前に両親が殺された旅館の名。

「先程午後7時30分頃、岩手県〇〇市の金田一温泉のホテル松家で男性6人の死体が発見されました…」

9時のニュースは金田一温泉で先程起こった事件を報じている。

そして封筒にもう一度目をやると紅い文字が浮かび上がっていた。

『10年も待ったのよ。そろそろ私の所へ来て。
6人殺したけど物足りないの…
敬介が来ないともっと死ぬかもよ?』

敬介は招待状という『挑戦状』を握り締めた。
30分後…
敬介はボストンバックを愛車のGTRのトランクに入れた。
低いエンジン音と共に黒いモンスターマシーンは夜の街を駆けた。

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