らぶふぁんとむ20.4
朝の十時過ぎ、恵一は隣りの家の前にいた。
久し振りな事もあって緊張するが、恵一は意を決してインターホンを鳴らす。
『あ、恵ちゃん!?』
そんな呼び方をするのは旧姓坂下牧江の他にはいない。
「…わかる?久し振り。」
『今出るねー。』
出てきた牧江は、恵一の記憶よりも綺麗になっていて、言うならば大人になっていた。
「いらっしゃい恵ちゃん。」
「うん、久し振り、牧江姉ちゃん。」
牧江の両親への挨拶も程々に、ソファに落ち着く。
「あ、これクッキー。食べて。」
「わぁ、ありがと。…そうだ、見に来たんだよね?」
と、牧江は部屋の端にあるベビーベッドを指差す。
「あ、うん。そうだ忘れてた、おめでとう。」
「ありがとう。」
笑顔で牧江は答えた。
二人でベッドの中を覗き込めば、小さな赤ん坊が眠っていた。
「あんまり姉ちゃんに似てない。」
「旦那にも似てないわよ。」
正直に言う恵一と牧江。
「生後一か月ならこんなものだって。」
牧江が手をひらひらさせながら言う。
「あ、そういえば旦那さんは?」
「お仕事。月末で忙しい、て。」
父さんと同じだ、と思いつつ恵一は口に出さない。
「名前は?」
「旦那?」
「なんでさ。」
楽しそうに牧江は笑う。
「珠美よ。」
「珠…美。」
偶然にも彼女と似た名前だった事に恵一は一瞬たじろいだ。
「そうそう、恵ちゃん見て。この子女の子なのにさ。」
牧江は珠美の服を脱がせながら言う。
「ほら、腕に痣があるのよ。肩出して歩けないじゃないね。」
左の二の腕の位置に、確かに痣のようなものがあった。
恵一の脳裏に衝撃が走った。以前見た事がある気がしたからだ。位置や形も似通っていた。
一度だけ見た、彼女のものと。
「あ、起きた。」
「…そりゃ脱がされたりしたら起きるでしょ。」
「ほら、抱いてみて。」
恵一は珠美を抱かせてもらった。
珠美は、じっと恵一を見続ける。
かと思うと、恵一の首元に手を伸ばした。
「いてて。」
「大丈夫?」
珠美は恵一のネックレスを掴んでいた。いや、通されている指輪を。
「あらあら、流石女の子。」
「だめだよ、これはやれないよ。」
悲しそう、かどうかは分からないが、珠美は手を離してまた眠ってしまった。
恵一の腕の中で。
「ふふ、気に入られたわね。」
「まさか。」
肩を竦めて、恵一は笑った。
久し振りな事もあって緊張するが、恵一は意を決してインターホンを鳴らす。
『あ、恵ちゃん!?』
そんな呼び方をするのは旧姓坂下牧江の他にはいない。
「…わかる?久し振り。」
『今出るねー。』
出てきた牧江は、恵一の記憶よりも綺麗になっていて、言うならば大人になっていた。
「いらっしゃい恵ちゃん。」
「うん、久し振り、牧江姉ちゃん。」
牧江の両親への挨拶も程々に、ソファに落ち着く。
「あ、これクッキー。食べて。」
「わぁ、ありがと。…そうだ、見に来たんだよね?」
と、牧江は部屋の端にあるベビーベッドを指差す。
「あ、うん。そうだ忘れてた、おめでとう。」
「ありがとう。」
笑顔で牧江は答えた。
二人でベッドの中を覗き込めば、小さな赤ん坊が眠っていた。
「あんまり姉ちゃんに似てない。」
「旦那にも似てないわよ。」
正直に言う恵一と牧江。
「生後一か月ならこんなものだって。」
牧江が手をひらひらさせながら言う。
「あ、そういえば旦那さんは?」
「お仕事。月末で忙しい、て。」
父さんと同じだ、と思いつつ恵一は口に出さない。
「名前は?」
「旦那?」
「なんでさ。」
楽しそうに牧江は笑う。
「珠美よ。」
「珠…美。」
偶然にも彼女と似た名前だった事に恵一は一瞬たじろいだ。
「そうそう、恵ちゃん見て。この子女の子なのにさ。」
牧江は珠美の服を脱がせながら言う。
「ほら、腕に痣があるのよ。肩出して歩けないじゃないね。」
左の二の腕の位置に、確かに痣のようなものがあった。
恵一の脳裏に衝撃が走った。以前見た事がある気がしたからだ。位置や形も似通っていた。
一度だけ見た、彼女のものと。
「あ、起きた。」
「…そりゃ脱がされたりしたら起きるでしょ。」
「ほら、抱いてみて。」
恵一は珠美を抱かせてもらった。
珠美は、じっと恵一を見続ける。
かと思うと、恵一の首元に手を伸ばした。
「いてて。」
「大丈夫?」
珠美は恵一のネックレスを掴んでいた。いや、通されている指輪を。
「あらあら、流石女の子。」
「だめだよ、これはやれないよ。」
悲しそう、かどうかは分からないが、珠美は手を離してまた眠ってしまった。
恵一の腕の中で。
「ふふ、気に入られたわね。」
「まさか。」
肩を竦めて、恵一は笑った。
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