らぶふぁんとむ20.7
土曜の夜、仕事帰りの恵一の携帯が着信を報せる。
「はい?」
『あ、恵一?』
「母さんか、なんだ?」
『あんた明日休みよね?帰ってきなさい。』
有無を言わせず、母は恵一に言った。
日曜の朝。
恵一は半眼で実家の前に立っていた。
「あらお帰り。」
「…折角の休みだってのに。」
「いいじゃない、車ですぐだもの。」
文句を言いながら恵一は家に上がる。
「それに、今日あなたを呼んだのは私ではなくて。」
「私だよ、お兄ちゃん。」
台所に立っているのは珠美だった。
「…どーいうことだ?」
「えー、本日はよくぞおいで下さいました。」
珠美は右手にマイクを持っているかのように立つ。
「珠美主催、お兄ちゃん誕生日パーティへようこそ!」
笑顔の珠美に対して、恵一は硬直した。
「…あ、今日誕生日か俺?」
「私も忘れてたものねぇ。」
「あんたは覚えとけよ。」
隣りで囁く母に言う。
「そうか、誕生日か。えっと、じゃあ今日で二十五か。早いな。珠美が今年で十だものな。」
「私が料理を作るからねー。」
と、台所に消える珠美。
「あぁ、泣きそうだ。父親の気持ちがわかる。」
「…旦那はホントに泣いてたわよ。」
暗がりから牧江が出てくる。必要もなく隠れていたらしい。
「はい、恵ちゃんおめでとう。そして私はこんにちは三十代。」
「そうか、牧江さんが三十か。早いな。」
「…恵ちゃん、あの子に料理させた事ないんだけど、大丈夫?」
ひそひそと小さい声で牧江。
「流石に食えないものは出てこないでしょ。うちの母親じゃあるまいし。」
そして数時間後。
「召し上がれ!」
「おぅ、いただきます!」
恵一が、少し崩れた卵焼きを口に入れる。
「…。」
「どう?どう?」
「珠美。調理実習はちゃんと受けるんだぞ。」
不思議そうな顔をする一同。
「え、もしかして甘すぎた?」
心配そうな顔をする珠美。
無言で、だが笑顔で恵一は卵焼きを割る。
「これなーんだ?」
中には白い粒、というより塊があった。
「…砂糖?」
「うんうん、間違えたんだな、よくあるな。ちなみにこれは塩化ナトリウムだ。」
げぇ、と牧江が顔をしかめる。
「…えっと。」
困ったような、でも分からないような顔で珠美がおろおろする。
「ま、これから勉強な。」
恵一は珠美の頭を撫でた。
「はい?」
『あ、恵一?』
「母さんか、なんだ?」
『あんた明日休みよね?帰ってきなさい。』
有無を言わせず、母は恵一に言った。
日曜の朝。
恵一は半眼で実家の前に立っていた。
「あらお帰り。」
「…折角の休みだってのに。」
「いいじゃない、車ですぐだもの。」
文句を言いながら恵一は家に上がる。
「それに、今日あなたを呼んだのは私ではなくて。」
「私だよ、お兄ちゃん。」
台所に立っているのは珠美だった。
「…どーいうことだ?」
「えー、本日はよくぞおいで下さいました。」
珠美は右手にマイクを持っているかのように立つ。
「珠美主催、お兄ちゃん誕生日パーティへようこそ!」
笑顔の珠美に対して、恵一は硬直した。
「…あ、今日誕生日か俺?」
「私も忘れてたものねぇ。」
「あんたは覚えとけよ。」
隣りで囁く母に言う。
「そうか、誕生日か。えっと、じゃあ今日で二十五か。早いな。珠美が今年で十だものな。」
「私が料理を作るからねー。」
と、台所に消える珠美。
「あぁ、泣きそうだ。父親の気持ちがわかる。」
「…旦那はホントに泣いてたわよ。」
暗がりから牧江が出てくる。必要もなく隠れていたらしい。
「はい、恵ちゃんおめでとう。そして私はこんにちは三十代。」
「そうか、牧江さんが三十か。早いな。」
「…恵ちゃん、あの子に料理させた事ないんだけど、大丈夫?」
ひそひそと小さい声で牧江。
「流石に食えないものは出てこないでしょ。うちの母親じゃあるまいし。」
そして数時間後。
「召し上がれ!」
「おぅ、いただきます!」
恵一が、少し崩れた卵焼きを口に入れる。
「…。」
「どう?どう?」
「珠美。調理実習はちゃんと受けるんだぞ。」
不思議そうな顔をする一同。
「え、もしかして甘すぎた?」
心配そうな顔をする珠美。
無言で、だが笑顔で恵一は卵焼きを割る。
「これなーんだ?」
中には白い粒、というより塊があった。
「…砂糖?」
「うんうん、間違えたんだな、よくあるな。ちなみにこれは塩化ナトリウムだ。」
げぇ、と牧江が顔をしかめる。
「…えっと。」
困ったような、でも分からないような顔で珠美がおろおろする。
「ま、これから勉強な。」
恵一は珠美の頭を撫でた。
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