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sweet

[333]  涼子  2006-03-03投稿
私は、小原加奈子。受験生真っ只中の中3。クラスでは、私の存在はロッカーのすみに落ちているシャーペンの芯と同格。唯一私の存在が出るのは、定期テストのときだけ・・・。
「今回の最高点は満点で小原さん。」この台詞でクラスが一瞬どよめく。
「また?」「中1のときそんな風じゃなかったよね。」いつも同じ台詞。
中1の私はバカだっただけ。だから、あんなくだらない事で・・・
私の右腕には深い切り傷が残っている。中1の調理実習のときに自分で刺したものだ。 たった一人の男子生徒のために・・・・・・
 中1の五月に私は、同じクラスの男の子と付き合っていた。今から思えば可愛らしいものだが、そのときは本気だった。
「加奈子、一緒に帰ろう。」私の彼氏、村木龍二が言った。
「うん、帰ろう。」笑顔で私はそう答えた。「またぁ、加奈子ったら見せびらかさないでよ。熱いったらないわ。」親友(そのときだけ)の夏穂がからかった。本当に幸せだった。龍二も夏穂も本当に親切で、私と笑ってくれていた。でも・・
夏休み、私が映画に誘っても龍二は「部活があるから。」と断るようになった。「試合を見に行く。」と言うと嫌な顔をするし、かわりに夏穂を誘っても夏穂も似たような言い訳で断った。私は、嫌な予感がしていた。そして、それは二学期になってはっきりした。 ある日、龍二に呼び出されて体育館に行くとそこには龍二ではなく、夏穂がいた。
「夏穂・・龍二は?」
「私が頼んだんだよ。龍二に『加奈子を呼び出して』って。『はっきりさせよう』って」夏穂の声はやけに冷たかった。
「はっきり・・・って?」私は理解したいとも思わなかった。
「わかんないの?なんで龍二が夏休みに映画に行かなかったのか。なんで、一度も加奈子と遊ばなかったのか。」
私は、耳をふさぎたくなった。でも、夏穂はもっと強い口調で言い続けた。
「私ね、龍二と付き合ってるんだ。夏季大会のときから。」
私は返す言葉が思いつかなかった。夏穂はにっこり笑った。
「ねっ、加奈子。ここで龍二と終わらせない?あんたが言ってくれると龍二もはっきりするんだ。どうせ、大した関係じゃないでしょ?」夏穂は私がいつも見ていた夏穂でなかった。
私は、美術のカッターナイフをかばんから出していた。

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