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鬼牛の鳴く島

[485]  那須  2007-06-29投稿
終業のベルが鳴った。黒板を叩きながら大声で怒鳴る教授を尻目に、生徒たちは、前列で真面目にノートを執る数名を残して一斉に教室を後にした。
いつにも増して生徒の顔が晴れやかなのは、明日から夏休みがはじまるからである。夢と希望に満ちた長い長い夏休みが始まるのだ。

三上祐介。経済学部三年。テニスサークル所属。祐介の夏休みの予定は決まっていた。サークルのメンバー五人と、一週間の旅行を計画したのだ。沖縄を拠点に、クルーザーで周辺の島をゆっくりと観て回る。二ヶ月前からどれだけ待ちわびたことか…
資金調達の為にアルバイトを幾つも掛け持って、毎日抜け殻のようになっていた時もあったが、今となってはあの頃の自分に感謝したいぐらいだ。おばあちゃんからの思いがけない援助もあり、からの沖縄での一週間、いくら遊んでも遊び足りないぐらいの資金が集まった。
他のメンバーもこの日のためにおそらく死にものぐるいで資金をかき集めたに違いない。

出発当日、空港に集合した五人は、これから始まる夢のような一週間に向け思い思いの荷物やファッションに身を包み、顔は希望に満ち溢れていた。

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