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雨の人?

[328]  桐生徳人  2007-06-30投稿
いつ止むともわからない雨…
けたたましい蝉の声もかき消されてゆく…
小さな公園のペンギンすべり台の下…
行き場を無くした女の子…


(これで良いんだ…美樹さえ居なければ…お兄ちゃんは行きたい所に行けるし、パパだって今みたいに仕事ばっかりしなくて済むもん。…美樹が居ない方がみんな幸せになれるんだ。…雨…止まないなぁ…)

『そこの可愛いお嬢さん。こんな所で何しているの?』
『えっ!?誰?』
そこには白いワンピースで紫陽花みたいな傘をさした女の人が立っていた。
(綺麗な人…それに何か懐かしい香りがする…)
『さっきお兄さんが捜してたよ。』
『…お兄ちゃんの友達ですか?』
『…違うよ。さっき偶然お兄さんにあなたのことを尋ねられて、今、偶然あなたを見つけただけよ。』
『嘘。そんな偶然が続く訳ない。どうせお兄ちゃんに頼まれたんでしょ…
…早く帰ってよ!!絶対戻らないんだから!!お兄ちゃんにもそう言っといて!!』

女の子の心の中とシンクロするように雨は強さを増してゆく…

(怒った…かな?でも戻りたくないし…)
『…うっ、えぐぅっ…うう…』
(えっ嘘っ泣いてるっ!?ちょっと強く言っただけなのに何で!?)
『えっ!?ちょっと…なっ何で泣いてるんですか?』
『うっ…だってあなたのお兄さん…こんな雨の中…傘もささずに…うっ…あなたの事必死で捜してて…でもあなたは…えぐっ…戻らないって…うっ…可哀想で…』
『だからって泣かないで下さいよ…』
(お兄ちゃん…)
『だって…うっ…えうっ…ぐっ…』
(………)
『…分かりました!!…戻りますから泣かないでください。』
『ほんと?』
『早くしないと今度はお兄ちゃんが病院送りになっちゃうし…』
『よしっ!!じゃあお兄さんとこ行こうか。ほら、おぶってあげるから。』
『えっ!?嘘泣きだったんですか!?』
『気にしない。気にしない。さぁ乗って、お兄さん風邪ひいちゃうよ。』
『いいですよ…自分で歩きます。』
『いいから、いいから。』
『ちょっと、あっ!!』
(無理やり乗せられてしまった、でも心地いい香り…雨に濡れた紫陽花の匂い…)

『やっぱりお兄ちゃんの友達だったんですか。』
『それは違うよ。でも偶然尋ねられたってのは嘘。本当はね…来てくれるのを待ってたんだ…』

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