OCEAN
『さようなら』から始まる新しい恋,と人は言うけれど,私にそこから見える世界なんてあるのだろうか。
あの日,私は全てを失い,あの日,私は心の中身をどこかに置いてけぼりにしてしまった。
胸を抱えても掴みようがない孤独──喪失感。
それは何をしていても癒えぬ傷で,明日さえ
見えない 見えない 見えない……。
この海の向こうにある世界に人々は『希望』を見出し,
この海の向こうにある世界に人々は『明日』を見出す。
海の向こうに私を癒やすモノがあるのなら,海の向こうで貴方が私を待ってくれているのなら,
行きましょう。
どこまでも,どこまでも。
独りでも,寂しくなんかないから。
貴方に逢えるから。
だから,
私は死にましょう。
貴方が居ない世界なんか,
私には有り得ない。
有り得ないものなんか,
この世には必要ない。
貴方に必要とされていた私
貴方はもう居ないから,
私を必要としてくれる人も居ない。
だから,
『私』も必要ない。
ふらりと,防波堤から飛び込んだ私の躰に冷たい水がじわりと染み込む。
けど,
貴方に逢えるなら,辛くなんかない。
私の躰は海の屑と化し,
私の躰は遠い海の向こうへと旅をする。
ざざん……ざざん……。
──明日になれば,貴方が迎えに来てくれる──……。
もう少しだけ,待とう。
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