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まつげ、ぬらす。

[354]  マヌ  2007-07-02投稿
雨の様に流れ落ちる、涙を止めてほしい。
風俗嬢の私は、その日も配達に出掛けた。数時間の情事は決して易しくはないけれど、お金が欲しくて、止められなかった。いや、本当は…虚しかったから。誰にも愛されず育った私はとにかく大事にされたかった。それが一時でも良い。甘く優しい、嘘の言葉に身を沈め、次の場所へ向かう。悲しかった。でも、彼等は皆優しい。
その日も、私はとあるホテルへ配達に向かった。
ノックして部屋に入る。
「指名ありがとう!キサだよ………」
彼の姿に目を奪われた。圧倒的な美を持つ青年。その伏し目がちな表情には水晶のような瞳が見え隠れしている。彼はおもむろに言った。
「俺を奪ってくれませんか。」
彼女は戸惑う。見ればみるほど、彼が純粋に見えるから。でも、彼女は人ではなく、金をもらうのだ。
「うん。いいよ。」
彼に覆いかぶさり、優しく、優しく愛撫した。やがて、彼は息を切らしてキサを癒す。甘く、優しく、包み込むように……
儀式がおわると、彼女が着替えるよこで、彼は言う。
「ありがとう。自由になった。」
よく判らぬまま、部屋を出ようとする彼女の背中に彼は、
「鳥になりたい。」
と呟いた。だが、彼女には届かなかった。
ホテルをでると、背後で叫び声が聞こえた。アスファルトに広がる赤い薔薇。真中には大きく翼を広げた彼が眠っていた。
彼女はただ、ただ涙した。余りにも美し過ぎた。降り始めた雨に肩を濡らし、ただただ泣いていた。
今日は雨。傘を忘れた彼女は彼を想い今日も泣く。

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