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カラスの天狩り 2 『カラス…?』

[513]  くろあげは  2007-07-03投稿
普通…なら、
カラスは言葉を喋らないはずだ。
でも限に今、このカラスは喋った。
綺麗な澄んだ声で…。

しかも奇妙な言葉だ。

それが、僕がこのカラスに対して持っていた、
恐怖心を和らげた。
これはカラスじゃない、と僕は何故か確信した。

だからだろうか?
僕は問い掛けをしてしまった。
自分を殺すのか、と。


『へぇえ…、
こんな状況なのに、
俺の言葉ムシして、疑問を持たないでさぁ、
しかも、逆に質問?』


ウケるー、と言って、
カラスは笑い始めた。
人間の笑い声で。

その親しみやすい口調に、僕はさらに安堵した。

カラスは僕の上から降りて、僕の周りで、軽快にステップを踏むように跳ね回り始めた。
僕はゆっくり上半身を起こして、足を伸ばした楽な体制で座った。


…‘俺,…?
このカラス、
雄…いや、男?
しかも、けっこう若い声で…綺麗…。


僕の周りを回っている、この謎のカラスを、目で追った。

一見普通のカラスだ…。


なんなんだ?
あっ……。


《ブルッ…》
一瞬身が竦んだ。

人語を喋る普通じゃないカラス。
このカラスはもしかしたら、本当に死神の遣いなのではないかという思いがよぎったから…。

−−−怖い。


−−−−−あの、
火葬場での事がきっかけで、それから僕はカラスが恐ろしくてしょうがなくなった。

学校帰りには、
カラスが居る場所を極力避けて通るようにして、早く帰って、
夕方までには、遊んでいる途中でも帰った。
なにより、カラスが活動し始める時間には、
どんなに行かなければいけない用事があっても、絶対に出掛けなかった。

中学生になったいまでも、多少薄らいだものの、まだカラスに恐怖心を抱いている。
そして、
時折、カラスに
魂を盗られる夢をみる。

僕の胸に爪を立てて、
魂をえぐり出される。
という恐ろしい夢…。

…だから、
今日も早く帰るつもり
だった。


『怖ぁーい?』


突然カラスが、
僕の心でも見透かしたように話かけてきた。
いつの間にか左腿の上に乗っかっている。


『大丈夫。
あげるから、貰うだけ』


…へ?
意味が解らないんだけど…。

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