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航宙機動部隊第三章・23

[470]  まっかつ  2007-07-05投稿
『それは結構でしょう議長―私共も何も一時は二三00万を数えた天文学的規模の荒らぶる民衆を抑えるのに、貴方の行われた手段が誤りだった等と、なじる積もりはございません、又、最終的に鎮圧の主力に立った合衆国軍を一概に悪く受け取るのも謬見と申すべきなのも、充分承知しておりますよ?彼等の立場に身を置いて見れば、いきなり顔も知らない、しかも民間人と闘えと命令され、少数ながら同僚を失っています―恐らくは彼等も酷く戸惑い、そして困惑している事でございましょう―そこまでは分かるのですよ』
質問壇の上に置かれたペットボトルを小休止代わりに口に運んで、ピエトロ=ガルバーナは論陣の本隊をいよいよ披露して来た。
『だとしたらですよ議長?これ程有能で、強力な戦闘力を有する精鋭集団が何故、僅か四00人たかだかの星間諸侯太子党に対しては、一発の銃弾も、ビームも放てず手をこまねいておるのですか?』
興奮の余り、あるいは演じられた憤慨のままを両手で壇上にぶちまけながら、革新派の領袖は止めとばかりにたたみかけた。
『否、もっとはっきり断言しましょう!全ての元凶はただ一人!太子党を率いるフーバー=エンジェルミでしょう!たった一人の若僧等、一枚の令状と刑事二人で事足りた筈なのです!完全武装の軍隊一二万等要らなかった!早くに司法的決断を下せばオストレスタジアムも先刻の大暴動も起きなかった!併せて三万人近くも死ななくて済んだ!更に大元となった連続拉致事件の被害に有った子供達!その一部なりとも取り戻し、親の所に還せたかも知れない!たった一人を逮捕さえしとけばこれだけの事が出来たのですよ!議長、一体どうしてここまで後手後手に回ってしまったのですか!?』
『太子党と言うのは、中央域文明圏の習慣・伝統上、例え公権力で有っても、手を出すのは極めて困難な存在でありまして……』
半ば覚悟していたとは言え、ペアリーノ=グイッチャルディーニ氏の答弁がまともに議場に伝わったのは、その中途までであった。
説明の陳腐さ不甲斐なさに、遂にぶち切れた数百人が上げた罵声の洪水は、覇気に欠ける逃げ口上を掻き消し、粉砕するのに充分だった。
答弁は事実上中止され、そのまま弾劾決議の投票を余儀なくされたのだ。
いよいよグイッチャルディーニ議長に審判の下る時が来たのだ。

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