カラスの天狩り 6 『薬』
「いっ……」
一瞬右目に鋭い痛みが走り、僕は顔をしかめた。
右目から圧迫感が消えて、そのかわりに、目の奥からジンジンと響いてくるような鈍い痛みが、右目全体を覆っているような、弛緩した感覚がした。
左目を開けて見ると、
夕暮れ時の、あの綺麗な情景の空が見えた。
−−あれ…?
なんで 僕は空を見上げているんだろう…?
−それに、先程まで右目を押さえていた両手が、いつの間にかバンザイしたように僕の頭の両脇にきている。
動かない。
両手首が、誰かの手によって押さえ付けられていた。
その手は女の子みたいにか細くて、綺麗な白い肌だと僕は思った。
−−けど、何かがおかしいことに気付いた。
何で空が真っ正面にきているんだろう…?
それに、この手は…?
背中に圧迫感があるし、後頭部に、髪を引っ張られているような感じが…。
手首も−−…?
あれ?
よくよく冷静になってみれば、僕は地面にあおむけになっている−−…?
あれ…?
今、何をされたっけ…?
あっという間の出来事。
僕は呆気にとられたままで、抵抗するという意志が思い浮かばず、
暫くぽかんとしたままの状態だった。
−−−−…そうだ…
あの時、
彼は一糸乱れぬ鮮やかな手つきで、僕の両手首を掴み、右目から引き離すと、そのまま僕を地面に押し倒した。
それがやんわりとした、優しい力加減で僕は痛みを感じなかった…。
そして僕の上にまたがり、一度地面に両腕を押さえ込んで、左手首だけ離すと、かわりに後頭部に手をまわして髪を深く掴んだ。
「…あっ!」
左手が自由だということに気がついて、僕は抵抗の意を込めて彼の左腕を掴んだ。
人の体温が伝わってくる温かみのある、柔らかい腕だった。
でも彼はさほど気にせず、左腕を一瞥しただけ。
そして屈み込んできて、僕の耳元で一言。
『薬』
「えっ?」
『−−−……この痛みが無くなって、
快楽になれる‘薬,を、俺が呑ませてやるとしたら……
あんた、呑むか?』
−−…唐突な、
そんな質問だった。
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