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鬼牛の鳴く島 6

[366]  那須  2007-07-13投稿
「おかしい…」
徳本が呟いた。
五人が静かに顔を上げ、徳本の方を見た。
「奇跡的に嵐も弱くなってくれたんだが…一向に本島に近づいてねぇんだ…」
「どういうことですか?近づいてないって…」
三上が大きく揺れる、立つのもやっとな船内を何とか徳本の隣まで歩くと、徳本の顔をのぞき込んだ。
「もう本島が見えてもいい頃なんだよ。この嵐だ…方向を間違えたのかもしれねぇが、きちんとレーダーやコンパスは作動してる。それに…」
「なんです?」
「見てみろ。」
三上は言われるままに徳本の目線を追った。
「あれって…」
「島だよ。」
三上の心に希望の光が差し込んだ。本島ではないが、とにかく陸地を発見したのだ。陸に上がって嵐が収まるのを待てば、後はどうにでもなる。
「みんな!島だ!陸地だぞ!」
三上の声に最初に反応したのはやはり井上で、島という言葉を聞くやいなや跳び上がるように立ち上がった。
「やった!助かった!」
井上はその目で島を確かめると、今度は力無く崩れ落ちてしまった。由香、かすみ、拓海の三人にも、ようやく笑顔が戻った。

しかし、徳本だけはなぜか浮かない表情で島を見つめていた…

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