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航宙機動部隊第三章・26

[456]  まっかつ  2007-07-13投稿
疑惑と懸念は当然の如く、先程自分をこてんぱんにした急進改革主義者のホープに向けられた。
『ピエトロ=ガルバーナ君の身辺調査を頼まれてくれるかね』
不意に万年筆を止めて、グイッチャルディーニ氏は書類に目を落としたまま合法だが黒灰色の指示を下した。
『は…それは構いませんが』
秘書から受け取った0・三mmの情報標示ペーパーを両手にしながら、首席政務官の心配したのは、道義的是非についてではなかった。
『司法省ならば必ずや太子党の捜査・検挙を認めよと条件を出して来ますが…さもなくばもう、彼等は従いますまい』
これだけ祖国も同胞も職権も踏み躙られコケにされ、軽視されたのだ。
おまけに、先日からの大暴動で多くの職員が血を流し、命まで落とした者すらいる。
その元凶に対する白紙委任状の一枚でも切らないと、鬱積しては揮発性のガスを放つ彼等の不満がこちらに向かって牙を剥くのは必定だった。
議長は顎に掌を当て、思案した。
余り気は進まないが、気が進まないだけで納得を期待出来る状況は既に越えてしまっているか。
今更宙際情勢を云々するのも悠長に過ぎるし、仮に最悪連合艦隊司令部や中央域と対立する局面に遭遇するとしても、先ずは足元を固めた方が良いに決まっている。
それに―議長は考えた。
星民対策は勿論の事だが、ここに来て隠微な動きを示し始めている身内の代議士達への何よりの牽制となるであろう。
そして、一緒にピエトロ=ガルバーナの企みを焙り出す効果も望めるかも知れない。
ここでようやく顔をジョゼッペ=ヴェリーニに向けた議長は、
『彼等に譲歩せねばなりますまいな』
控え目な言い回しでフーバー=エンジェルミの逮捕を命じた。
少なく共、表際は不本意そうに。

パレオス星邦中央政府は、この時点で太子党との全面対決を、副次的なきっかけでではあったが、ようやく決意したのであった。

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