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MURASAME

[489]  あいじ  2007-07-13投稿
ぬえ?

「話などする必要はない!」
竜助の刃が宙を舞った。可王は座ったままの姿勢でその刃を指で掴んだ。
「ぐぅ…!」
竜助が力を込めるが清姫の刃はピクリとも動かない。
「意外と血の気が多い奴だ…そのまま聞け」
可王が微笑む。


「お前が追っていたあの妖だがな…」
可王は言葉を切った。竜助を見つめる顔が歪みを帯びているように見える。
「あれは…ぬえではない」
「ぬえじゃ…ない?」
「正確に言えば本体ではない、ということだ。例え、あの場でお前があれを殺そうとしても死なんだろう…」
竜助がサングラスごしに可王を見つめる。その瞳は妖しい輝きを放っていた。
「…一つ質問がある…そもそもぬえとはなんだ?」
「あれは歪みよ。人の歪み、妖の歪み、それが重なり混じり合いあのようなモノが現れる…まったく…人層も妖層も荒れたものよ…」
可王は自虐的な笑みを浮かべ、頭を掻いた。
「あれを殺すには本体を見つけることだ。本体を殺せば分身も消える。…もっとも、本体がどこにいるかなど知らんがな…」
「何故、僕にそのことを?」
可王が清姫の刃を離し、立ち上がる。そして、暗闇の中へ溶け込む。
「歪みは神を蝕む…俺にとって、ぬえは邪魔な存在だ…それに…」
可王が言葉を切った。
「妖を取り締まるのはお前達の仕事だ…」
その言葉が終わった時、既に可王の姿はなく、辺りには暗闇が残っているだけだった。


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