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鬼牛の鳴く島 10

[420]  那須  2007-07-16投稿
その瞬間、牢屋の中はとてつもない恐怖に包まれた。牢屋の中で、なんとか冷静さを取り戻しつつあった三上も、思わず叫んだ。
「嘘だろ!!なんで!?なんでこんな…」
叫びと共に涙が溢れた。女子二人の絶叫と、三上の叫び、井上の怒鳴り声が入り交じり、狭い牢屋内はまさに地獄と化した。その時だった。今まで黙っていた拓海が、突然、立ち上がった。隠し持っていたナイフで縄を切ったのだ。一瞬の隙をついて牢屋の出口方向に駆けだし、女に向かってナイフを投げつけた。
「やめろ!」
三上はなんだか嫌な予感がして、拓海を呼び止めようとしたが、拓海の投げたナイフはすでに女の右肩付近に刺さっていた。本当に刺さるとは思わなかったのだろう。拓海自信も少々驚いた様子だった。
しかし、女は、表情一つ変えずに、拓海の足下にナイフを投げ返した。そして、全くと言っていいほど口を動かしていないのに、牢屋中に響きわたる、甲高くて不気味な声で、何かを叫んだ。
次の瞬間、数人の男が現れ、手にしたバケツから、次々に謎の液体を拓海の体にまき散らした。
「なんだよこれ…気持ち悪ぃ…」
拓海は、ただ呆然とその場に達すくした。

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