彼女を待っている?
電車がやって来ると私達はそれに乗り込んだ。
田舎なので都会に比べて車内の空間には多少余裕があるものの、やはり朝の電車は混む。
彼女は扉に背をもたらせて立ち、私は彼女に対面する形で手すりに手をかけて立っている。
その距離約二十センチ。
ひとたび電車が大きく揺れれば、嫌でも体が触れ合ってしまうこと請け合いである。
私は今日に限って電車が激しく揺れることを電車の神に祈った。
しかし、私の祈りも虚しく、電車は大して揺れもしないまま淡々と目的地に向け進行して行く。
私の目の前には俯いた彼女の顔がある。
私ははたと思い立った。
こんな密接した状況で、彼女とまともに目が合ってしまったらきっと平静を保っていられなくなる。
ともすれば、私の「私」が暴れ出しかねない。
来るべき暴走を未然に防ぐ為、私は視線を正面から幾分か下に下ろしてみた。
そして結論から言えば、「私」の暴走を防ぐ為のその策は、却ってそれを扇動する形となってしまったのである。
私は彼女のささやかな胸の谷間を、図らずも上から覗き見てしまったのだ。
これは故意ではない、事故である。
それから私は電車に乗っている間中、終始「私」の暴走の鎮静化に余念がなかった。
時折彼女がそんな切迫した私の表情を見て、上目遣いで「大丈夫?」と訊いてきたりしたのだが、それがさらに「私」の暴走に拍車を掛けたのは言うまでもない。
田舎なので都会に比べて車内の空間には多少余裕があるものの、やはり朝の電車は混む。
彼女は扉に背をもたらせて立ち、私は彼女に対面する形で手すりに手をかけて立っている。
その距離約二十センチ。
ひとたび電車が大きく揺れれば、嫌でも体が触れ合ってしまうこと請け合いである。
私は今日に限って電車が激しく揺れることを電車の神に祈った。
しかし、私の祈りも虚しく、電車は大して揺れもしないまま淡々と目的地に向け進行して行く。
私の目の前には俯いた彼女の顔がある。
私ははたと思い立った。
こんな密接した状況で、彼女とまともに目が合ってしまったらきっと平静を保っていられなくなる。
ともすれば、私の「私」が暴れ出しかねない。
来るべき暴走を未然に防ぐ為、私は視線を正面から幾分か下に下ろしてみた。
そして結論から言えば、「私」の暴走を防ぐ為のその策は、却ってそれを扇動する形となってしまったのである。
私は彼女のささやかな胸の谷間を、図らずも上から覗き見てしまったのだ。
これは故意ではない、事故である。
それから私は電車に乗っている間中、終始「私」の暴走の鎮静化に余念がなかった。
時折彼女がそんな切迫した私の表情を見て、上目遣いで「大丈夫?」と訊いてきたりしたのだが、それがさらに「私」の暴走に拍車を掛けたのは言うまでもない。
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