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クロスリング

[140]  ぱーる  2007-07-18投稿
老婆は数分間、じっとおれの顔を見ていた。

そして、短く一言、言葉を発した。


「………違うね」



違う



それを理解するのに、さほど時間は要らなかった。

「…そうだ。おれはあんた達の事は知らない。ここがどこかも知らない。名前は同じみたいだが、人違いだ」


同じ名前の奴に間違われている


今の状況は解らずとも、これだけはたしかに思えた。

しかしおれの言葉に、女は納得しないようで渋い顔をしていた。

「だったらあなた、どうしてレンのベッドで眠ってたの」


「…気付いたら…ここで寝てたんだ」


とぼけた答えだった。

しかしそれが事実な以上、他に答えれなかった。

「またビンタされたいの?」

そう言いながら、女はハアーと手に息を吹きかけている。

…それって、ビンタじゃなくて殴る時にやるんじゃないか?

しかも今どき…古い…

など、考えている場合じゃない!こいつマジだ。

「ま、まて!おれは嘘言ってるんじゃない!本気だ!本当だ!」

慌てて弁解するが、自分でもなんだかとても嘘臭く聞こえた。

「ふ〜ん…」

女の反応でおれは確信した。



…終わった

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