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MURASAME

[535]  あいじ  2007-07-20投稿
ぬえ?

一鎌の矢とは、矢竹の一種であり、二本が並んで生え、筋も太さも全く同じ双子竹から作られた矢のことである。一鎌(一振りの鎌)で二本の同じ竹がとれることから一鎌の矢といわれている。
「お前の実体は影の中だ。そして分身はお前の影でもある。影と本体が逆転している妖、それがぬえの正体!」
ぬえの影は苦しそうにもがき、一鎌の矢を抜いた。そして再び分身を走らせ、竜助に飛びかかった。竜助は素早く駆け出し、引き抜かれた一鎌の矢を拾い上げ、背中にしょっていた全ての竹矢をぬえの影に突き刺した。
ぬえは苦痛に打ち震えながらも竜助に剛腕を叩きつけた。
「くっ…あれだけ撃ち込んだのに…」
竜助の顔に焦りが浮かぶ。ぬえは辺りをどす黒い血液で汚しながら飛びかかる。竜助は身を翻すとぬえの顔面を蹴り上げ距離をとった。
「使うしかないか…」
竜助はサングラスを外し、ぬえの瞳を睨みつけた。
ぬえの動きが止まり、竜助を狙った腕がブルブルと震えた。まるで竜助の瞳を恐怖するようにその場に沈黙した。
「今だ!」
竜助は飛び上がり清姫の刃をぬえの影に深々と突き刺した。そして勢いよく回転させ、本体をかき回した。
「蛇貫転!」
ぬえの体が分身ごとバラバラに粉砕され影からおぞましく醜悪な妖の死体があふれ出る。
「これが…歪み」
竜助は異様な臭気にふらつきながらもその死体を覗いた。
そこにはドロドロとした粘液にあらゆる妖の骨が混じり、ボロボロと崩れ、溶けていた。
「そうか…歪み、それは豊かで平和な世の人や妖の心に忍び寄る欲望、妬み、あらゆるマイナスのエネルギーが一つになったものだったのか…」
竜助がサングラスを付け直し、ぬえの死体に清姫を突き立てた。清姫の刃はその死体を蒸発させるように白い煙を上げ、消し去った。
「終わり。処分確認…と」
東から太陽が登り、竜助の顔を赤く染め上げた。

ぬえ 終

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