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故郷

[792]  金田七耕助  2007-07-24投稿
 この半年間、パート契約で働いてきたパン工場とも、今日でお別れだ。
 同じ境遇の五人のの中間達とも、お別れだ。
 仕事が終わり、六人で打ち上げをすることになり、居酒屋に行った。まずまず盛り上がったし、宴も終わりにさしかかり、連絡先の交換をすることなった。
 六人の中で、最もおとなしく仕事も真面目な星山が、不思議な冗談を、真面目な顔をして言った。
 ごめんね、みんな。俺は地球人じゃないから、連絡先が無いんだよ。でもまたいつか来るよ。
 何か、特殊な事情があるんだと思って、誰も何も言わなかった。
 割勘で支払って店を出て、数歩進んだところで、星山が言った。
 じゃ、俺はあの公園の滑り台の上から故郷に帰省するから、みんな見送ってくれ、と言い残して、スタスタと一人公園に向かい、滑り台に登った。
 全員が呆然と見ているところへ、夜空をスッポリ包むような巨大な円盤が飛来し、星山の真上で静止した。
 円盤に吸い上げられながら、星山が空中から叫んだ。
 みんな、半年間ありがとう。もう、来られないかも知れないけど、五人のことは一生忘れないよ。
 それから、俺が地球に来たのは、罰ゲームで、宇宙で一番ストレスのきつい地球の職場で働くことになったからなんだよ。
 それだけ、言い残すと、星山は一瞬で円盤に吸い込まれ、円盤は夜空の彼方の、星山の故郷に飛び去った。

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