「嫌だょ…そんなの…」

『食事だなんて…人間をまるで食べ物みたいに扱って…』

生きる為には殺さなければならない。

人間を

佳奈美は俯いていた顔を上げてゆっくりと視線を死体へと向けた。

しかし数秒見ただけで目を逸らしてしまった。

そして佳奈美の腹の音が鳴った。

更に追い討ちをかける様に鋭い頭痛が佳奈美を襲う。

いくら精神が拒絶しようとも体は血を求めていた。

＊

『さて…
この行動が吉と出るか凶と出るかだな…』

勇は森の中から息を潜めて佳奈美を見守っていた。


「嫌だょ…そんなの…」

佳奈美は俯きながら震える声で呟いた。

『やっぱり相当ショックが大きいみたいだな。
いくらなんでもやり過ぎたかな…
でもこればかりは心を鬼にしてでも教えてやんないといけない事だからな…』

佳奈美は顔を上げてゆっくりと死体へと視線を向ける。

しかし数秒見ただけで目を逸らしてその直後腹の音が鳴り険しい表情で頭を押さえた。

『そろそろ我慢の限界かもな…』

＊

数分後。

頭痛はますます酷くなり視界がぼやけ始めた。

そして自然に体は死体へと近付いていた。


「うぅ…痛いぃ…頭が…」

佳奈美は口を死体の近くへと近付けた。

「ダメよ…
飲んでは…ダメ…」

佳奈美は顔を死体から遠ざけた。

しかしその直後、自分とは違う自分の声が聞こえた。

『何を我慢しているの？
早く飲みなさいよ甘くておいしいわよ…』

「嫌よ…私には…そんな事…
出来ない…」

『出来ない…？
何を言っているの？
2週間前に貴女は自らの手で人間を殺して血を飲んだのよ？
出来ない所かもうやってるじゃない？』

「私じゃない…！！
やったのは貴女よ！！」

『私と貴女は一心同体よ…
表裏の存在であり一つの魂
貴女は私
私は貴女。』

「でも…！！
そんな事！！
人間として最低な事はしたくないの！！」






『人間？』




『何を言ってるの？』



『私達は元から人間じゃないじゃない。』










『いつまで人間ごっこをしてるつもり？』

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