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航宙機動部隊第三章・39

[434]  まっかつ  2007-07-31投稿
『作戦については良く解った―そこで、左総長殿にお尋ねしたい。今回の戦いで最も肝心になるのは、全軍で時空集約航法(SCCS)を行う所だとのお話だったが、これ程の規模を一括して対象にするのは、過去に先例が無い。一体どの位の成算があるのか、ご説明頂きたい』
最初に発言を求めたのは、帝国切っての理論家、第五宇宙軍司令官M=ダイニ宙将だった。
『それはグリーンチューブ=アウト時の三次元出現散布界如何によります』
通常、まともに運用出来るのは一00隻単位とされる同航法最大のネックが、この制約にあった。
扱う質量が増えるに従って、着陸すべき滑走路が選べなくなる事態との摩擦が大きくなるのだ。
『ではその整合率をどの位理想に近付けるかにかかっていると思うのだが、閣下はこれに関して、誤差はどれくらいに抑えれるかとお考えか?特に成否のボーダーは幾らだと見ておられます?』
『一定以上の質量の場合、その対象体その物の慣性モーメント由来の自律性が、三次元出現時の散布界無秩序化と拮抗作用を働かす原理が証明されています―具体的には、どれだけ巨大な集団でも艦船換算で一000隻以上の規模になると、指数関数的なリスク増加は無くなるのです』
これがクレオン=パーセフォンが持つ切札だった。
人命の損失さえ無視すれば、敵が思いもしなかった奇襲攻撃が浴びせれる。
逆説的に危険を甘受する事によって、予測された甚大な被害を免れ、合衆国軍の強味の全てを控え目に見てもかなりの長時間に渡って無力化する事が出来るのだ。
だが―完璧と言う訳では勿論無い。
『して、誤差は?』
『敵機動部隊への攻撃出現ポイントに関しましては、誤差三七00(±)以内で成功と見なします』
これより遠ければ、戦闘態勢を整える前に最外縁征討軍側の集中砲火に滅多撃ちにされ、近過ぎれば、お互いの艦列が重なり、それ以上の地獄絵図と化してしまうのだ。
『宙浬法で?』
M=ダイニの質問は的確を極めたが、今更左総長が言葉を濁す分けにも行かなかった。
『いえ、キロメートルで、です』
それは、一万Mの上空からスカイダイビングして、鉄塔の天辺に無事足を下ろせと言われた位、極め付きの無理難題だった。

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