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MURASAME

[461]  あいじ  2007-08-04投稿
平将門?

市ヶ谷駐屯地
ここではある異変が起こっていた。
そもそも市ヶ谷駐屯地は作家・三島由紀夫が割腹自殺を遂げた場所である。
三島由紀夫(本名、平岡公威)
説明するまでもないことだが日本有数の作家であり、その作品は後の日本文学において様々な影響を与えた。


深夜の市ヶ谷駐屯地に影が入りこんだ。無論、正面口には厳重な警備が置かれ、普通の人間が入り込むことなど不可能の筈だった。
影は自衛隊一号館一階を堂々と歩いていた。深夜とあってか自衛隊内部も静かなものだった。
「全く…天下の自衛隊も不用心なもんじゃの」
影…薬師院大光明はそんなことを呟きながら廊下を進んだ。会館の二階に上がるとそこは異様な空気で溢れていた。夏だと云うのにベトベトとした悪寒が大光明にまとわりついた。大光明は手で体をさすると総監室へ向かった。
「さて…黒蜥蜴が言っていたことも気になるでな…出てきて貰おうかの」
大光明はそう呟くと小声で真言を唱え始めた。
やがて部屋の中心にもやのようなモノが集まり、それは人の形を成していった。軍服を身に纏い、日本刀を握り締めた端正な顔立ちの男がそこに立っていた。
男は手に持った日本刀を抜き、大光明に向け斬りつけた。
大光明はその刃を釈杖に仕込んである『関孫六』でそれを受け止めた。
「久しいのぉ…平岡…儂の顔を忘れたか…?」
男は豪快な叫びとともに尚も刃を振るった。大光明も女性とは思えない速さでそれを流した。
「おっと…今の儂は女じゃった…」
大光明はそう呟くと男に向かい斬りつけた。刃は男の目前で止まり、同時に男の動きも止まった。
「思い出さんか、これはお主が儂に預けた『関孫六』じゃ。お主の名は平岡公威!またの名は…」
「三島…由紀夫…!」
男はそう叫ぶとまるで険が抜けたように穏やかな顔つきとなった。
「聞かせて貰うぞ…お主が帝都防衛のため常世に渡り、何を見たのかを…」


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