狐の面?
屋台の兄ちゃんからお情けでもらった2匹の金魚をぶら下げて、私達は歩き回った。常に彼女が私の2、3歩先を歩いた。私は後ろから彼女を見ていた。そしてお互いにそれがしっくりきていた。ただ、彼女が浴衣の帯にぶら下げている狐の面が歩く度に上下に揺れる様が、まるで私をからかって楽しんでいるように見えて少し気分が悪かった。
不意に彼女が振り返り、私の背後の空を指差した。振り向くと紺色の空に一粒の光が尾を引いて、天高く登っていくところだった。やがてその光は勢いを失い、大きな大きな花を咲かせる。遅れて心臓を揺さぶるような轟音が辺り一面に響き渡り、更に遅れて人々の歓声や拍手が聞こえる。
そう言えば今年は久しぶりに花火を打ち上げるらしいと聞いていた。前年まで予算の関係で花火を上げることを泣く泣く諦めていたらしい。今年はその花火が復活するということで、例年よりも人出が大幅に増していたのだ。
私は次々に夜空に打ち上げられる彩り鮮やかな花火にしばらく呆然と見とれていたが、やがて彼女の姿が見当たらないことに気づいた。
消えてしまったんじゃないか。
何故だか無性にそう思われて仕方がなかった。
あの打ち上げ花火のように彼女は唐突に私の前に現れて、儚さと鮮烈なイメージだけを残して跡形もなく消え去ってしまう…。
私は必死で探し回った。人の流れに逆らって、人ごみを掻き分け掻き分け押し進んだ。すれ違う人達は皆迷惑そうに私を睨む。しかしそんなことに構ってはいられない。私はついに駆けだした。今度は彼女がいた時のようにはいかなかった。何度も人にぶつかった。それでも私は走り続けた。二人で買った金魚はとうにどこかへ落としてしまった。彼女の名前を叫ぼうとして、彼女の名前すら知らないことに気が付いた。私はわけの分からないことを叫びながら、祭りの外へと飛び出した。
不意に彼女が振り返り、私の背後の空を指差した。振り向くと紺色の空に一粒の光が尾を引いて、天高く登っていくところだった。やがてその光は勢いを失い、大きな大きな花を咲かせる。遅れて心臓を揺さぶるような轟音が辺り一面に響き渡り、更に遅れて人々の歓声や拍手が聞こえる。
そう言えば今年は久しぶりに花火を打ち上げるらしいと聞いていた。前年まで予算の関係で花火を上げることを泣く泣く諦めていたらしい。今年はその花火が復活するということで、例年よりも人出が大幅に増していたのだ。
私は次々に夜空に打ち上げられる彩り鮮やかな花火にしばらく呆然と見とれていたが、やがて彼女の姿が見当たらないことに気づいた。
消えてしまったんじゃないか。
何故だか無性にそう思われて仕方がなかった。
あの打ち上げ花火のように彼女は唐突に私の前に現れて、儚さと鮮烈なイメージだけを残して跡形もなく消え去ってしまう…。
私は必死で探し回った。人の流れに逆らって、人ごみを掻き分け掻き分け押し進んだ。すれ違う人達は皆迷惑そうに私を睨む。しかしそんなことに構ってはいられない。私はついに駆けだした。今度は彼女がいた時のようにはいかなかった。何度も人にぶつかった。それでも私は走り続けた。二人で買った金魚はとうにどこかへ落としてしまった。彼女の名前を叫ぼうとして、彼女の名前すら知らないことに気が付いた。私はわけの分からないことを叫びながら、祭りの外へと飛び出した。
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