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君だけを(8)

[254]  じゅりあ  2007-08-07投稿
井上も、調子が良いのか最近は休まず来ていた。
私が来るようになって一週間くらいか、さすがに「暇人」と罵られたけど。
どーせ、暇だし(笑)
井上みたいに特別やりたい事がある訳じゃない。
当然、将来の夢もある訳がなく…。
一度聞いた事があった。

「井上はやっぱ画家になりたいの?」

答えはイエスだ。

「井上ならなれるね!絶対」
お世辞じゃない。
なれるよ、絶対。

「だから早く、それ見せてよ」

スケッチブックを指差すと、
「カンケーねぇだろ」

とか言われたっけね。



数日が経っていつものように美術室へ行った。

「寝てる…」

珍しい。
机に顔を斜めにして俯せてる。
若干見える井上の顔が、結構イケメンだと知った。

机の隅っこに小さなメモ書き。

「出来たぞ」

ってそれだけ。

丁寧に布を覆われたそれをめくる。

以前見た時は、色がなかったけど今は鮮やかで、だけど人を穏やかにするような背景。
そこに、井上の好きなモデルさんが立っている。
そんな絵だ。

(凄い…コイツもしかしたら天才!?)

肩を叩いて叫びたい気分だったけどさすがにそれはやめた。
疲れてるだろうから。

代わりにメモ書きした。

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