携帯小説!(PC版)

ある泥棒

[542]  金田七耕助  2007-08-11投稿
 ある泥棒が空き巣に入ったが、何も盗る物がないばかりか、飢えた幼児が泣いていたので、持っていたおにぎりを食わせてやり、千円札を一枚置いていった。
 指紋から足がついて、三日後に逮捕された。
 しかし、心意気を刑事にホメられ、生まれて初めて人にホメられた感激にうち震え、以後、汗水たらして真面目に働き、余った金の半分は寄付するようになった。
 二十年後には大邸宅に住むまでになった。
 そこに泥棒が入った。見覚えのある顔だったので、聞いてみたら、二十年前に千円をあげた幼児だった。
 男は泥棒に言った。
「お前のお陰で金持ちになれたから、今手元にある現金三百万円は全部あげよう。」
 若い泥棒が答えて言った。
「生まれて初めて心底人に感謝されたし、あんたの人生を聞かせてもらって、やる気が起きた。金は一万だけでいい。来月返しに来る。」

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