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航宙機動部隊第三章・49

[406]  まっかつ  2007-08-17投稿
リク=ウル=カルンダハラの唐机の下には、一つのジュラルミンケースが置かれていた。
ただのジュラルミンケースだ。
その中には総領事の繰り出す【切札】が詰められていた。
札束も宝石も、核ですらそれには敵わないだろう。
短時間だが密度の高い労苦の末に得られたそれは成果だった。
フーバー=エンジェルミを破滅させ、太子党の息の根を止める一撃必殺のそれは切札だった。
その所有する波及効果は、確かにそれだけの自信ないし期待を抱くに価する代物だったのだ。
一度開かれれば、パレオス=合衆国陣営全体が震撼し、宙際政界の地図が一夜にして塗り替えられる程の威力を発揮するだろう。
正にパンドラの箱。
だが、それを自ら考案した少年に、それを開くに躊躇い等今更無かった。

目の前の画像では、相変わらず生けるパンドラの箱が黄金で分厚く塗装された理想だの未来だの目標だのを熱く語り、それに聞き入り先取りされた感謝感激に、一様に潤んだ瞳で恍惚の表情を見せる【信者達】の姿が映し出されている。
(確かにこっちの方が仕合わせかもな…切られたのが空手形だと気付きさえしなければ)
少年はその情景を眺めながら、そう心で呟いた。
だが同時に、較べるに異国の子供を救う為に命まで投げ出したマエリーの行い・信念に、それが勝るとはとても思え無かった。
そして―\r
『さあ、始めようか、俺の…俺達の闘いを』
自分と、今ここにはいない生者と死者に向けて、リク=ウル=カルンダハラはそう語りかけ、決然と立ち上がった。
ジュラルミンケースを手に持って。

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