振り下ろされた爪は力無く空を掻いた。

そして勇は恐る恐る目を開けるとそこには佳奈美の腕が突き刺さったオニの頭があった。
「佳奈美…？」

「………」

勇は目の前の光景に困惑しながらも佳奈美に問い掛けたが無表情のまま何の反応も無い。
佳奈美はオニの頭から手をズボッと引っこ抜いた。
手にはぐちゃぐちゃになった脳味噌が握られていた。
そして何故か周りのオニ達はまるで佳奈美に怯える様に固まって動かなくなっていた。

「お前…どうして…？」

「………」

「返事をしろよ！！お前本当に佳奈美なのか！？」

「…………」

佳奈美は何も言わなかった。

しかし無表情なその顔には一線の涙が流れていた。

「佳奈美…？」

「………ふふ…」
佳奈美の口許が吊り上がる。

「おい…」

「フフフ…」

無表情は笑顔へと変わった。

「ﾌﾌﾊｯﾊｯﾊ！！！」
「一体どうしたんだよ！？」

佳奈美の悪魔の様な笑い声を聞いてオニ達は一斉に逃げ出した。

「ﾊｯﾊｯﾊｯﾊｯﾊｯﾊ！！！！」

佳奈美も狂った笑い声を上げながらオニ達を追って森の中へと消えた。
「待てよ！！」

勇は起き上がろうとしたがふらけて倒れ込んでしまった。

『血が足りない…追う前にまずは血を吸わないと…』
勇は男性の死体に変化したオニの首筋に噛み付いた。

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