エンジェリック・イアー
聞こえる…
行き交う人々、雑踏、年末になると急に始まるお決まりの古い下水道の整備工事、ついでに隣の田中さんの家から聞こえる美少女キャラクターが歌うアニメソングの音漏れ…
聞こえる…
隣の教室の教師のダミ声はさることながら、思春期の若者である生徒達の聞くに堪えないないひそひそ話、その教室を貫通して隣の隣の教室までが筒抜けであり、ちなみに階下のコンピュータールームではいま『エクセル』というツールを使って表を書く授業をしている。
聞こえる…
巨大な時計頭の歯車が軋む音、夜に羽ばたく大嫌いな黒いアレの足音、ついでにコウモリがキーキー喧しいから、なおさら憂鬱になるような気がする。
聞こえる…
ハイヒールの音、ローファーの音、サンダルの音、スポーツシューズの音、その他もろもろの靴の種類までがこの頃聞き分けられるように為った。
聞こえる…
だから私は、雪が降りそうな鈍い色の雲を眺めながらいそいそと帰宅していたあの日に、死ぬほど驚いた。
学校から家まで帰る道の近くにあるコンビニでおでんを買ってきて、冷めない内に食べようと思っていたあの日。
忘れもしない、12月27日。ちなみにその日は午前中部活だったかな。
全く何の気配も感じないのにいきなり後ろから声を掛けられた時、私は心臓が潰れるかと思うくらいにびっくりした。
感想
感想はありません。