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夏の灯火

[370]  空緒 夕妃  2007-08-27投稿
私の家の近所には、夏には蝉がたくさんいる家があった。
今では「うるさいな。」としか特に思わないし、虫は苦手だから見ようとも思わない。
でも、時々昔のことを思い出すことがあるのだ。

その年の夏は暑かった。でも、小さい頃の私は汗が滴り落ちるのも気にせず走り回っていた。その時は確かバドミントンを道路でやっていた。私の打った羽が蝉のたくさんいる家の木の辺りに飛んでいって無くなってしまった。その頃の私には家の人に断って探そうだなんて思いつかなかったから、家の塀の外から一生懸命探していた。
その時見つけたのは羽ではなくて、まだ殻から出たばかりの蝉だった。私はその蝉を捕まえて家に持って帰った。今思うと、なぜそこで捕まえてしまったのかと後悔している。
捕まえたことは母には言わなかった、なぜなら母は虫が大嫌いだからだ。だから私は妹と秘密で育てようとした。
それが間違いだったのだ。
よく考えてみれば、私達は蝉が何を食べるのかさえも知らなかった。小さい私は家にある食べ物を与えてみたけれど、もちろん食べてくれるわけもなく、捕まえてから二日後に虫籠の中で息絶えていた。

今でも後悔の念があるのか、毎年蝉の声が聞こえ始めるとそんな事を思いだす。
私にとって夏とは、ただの楽しくて暑いだけではなくて、ほんの少しだけ悲しい季節でもあるのだ。

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