携帯小説!(PC版)

秘密

[476]  神楽坂  2007-08-27投稿
朝始業前のロッカー室。朝はいつも静かなはずの携帯が突然鳴り響いた。彼からだった。
『もしもし‥』
ドキドキしながら出た。
『おう。俺だ。』と彼。
『こんなに早くどうかしたんですか?』
同じ店にいた時は、携帯電話で話すなんてなかった。ただ、昼休みが一緒の時に私の話を聞いてくれたり、飲み会の時には割と一緒に飲んでたりしたけど。
店の中で一番仲良かったとは思うけど、本当にずっと個人的な付き合いなんて全くなかった。
彼の移動が決まって本当にショックだった。
私の中の彼の存在の大きさに、気付いた時にはもうどうしようもなかった。
彼が移動して2ヶ月。
送別会でなんとか聞き出した携帯番号とアドレス。私が近況報告を兼ねて月2回くらいメールを入れても、いつも一方通行。10歳も上でいまだにメールはしない人だから。
『今日は昼から検診で病院だ。』と彼。
『そうなの。』
『まあ早退だな。』
『めずらしいね。』
『終わると夕方だからな。』
わずかな沈黙の時間。
彼は何か言いたそうだけどなかなか切り出しそうにない。
『‥だから‥?』
いつもながら、単語の会話。お互い探るような会話で、顔が見えないから気持が見えず、もどかしく思える。
『で、どうだ。夕方、喫茶店、行くか?』
『行く行く!』急に大きな声になった私。
あわてて皆に背を向け、声をおさえる。
同僚たちに、相手が誰か分からないようにしたかった。
『終わったら、電話入れる。』
『うんわかった。じゃまた後でね。』
ほんの1、2分の会話に心躍らせる私。
彼からの突然の電話に思わず我を忘てしまいそうだった。
私は、彼と携帯番号交換したことも、私が彼にメールしてることも誰にも話してなかった。
彼とのことは些細なことも全て秘密にしたかった。
ただ喫茶店に行くだけだから、どうってことないはずだし、私の片想いは誰もしらないのに決まってるんだけど。
幸い誰も私の電話のことなど、気にもとめてなくてホッと胸をなでおろす。
でも、急にどうしたんだろう。彼が誘ってくれるなんて‥。顔が見られる。でも何を話そうか。喫茶店で二人きりなんて、緊張しちゃいそう。
彼が私のこと、少しは気にかけてくれてるのか、聞くことなんて到底できないけど、『メールするな』じゃ、ないことを願いたい。
今日は一日仕事になりそうもない。期待と不安でいっぱいだ。

















感想

  • 7745: 次が見たい [2011-01-16]

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