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空虚

[314]  霧生  2007-08-28投稿
目の前に広がるおびただしい死体…。

その死体に群がる黒い鳥。

遠くに見える青い炎の柱。

廃墟。死体。炎。煙。赤い染み。飛び散ったなにか。

その光景をぼくは震えながら見ている。

足が痛い。血が出ている。身体中が痛い。

震えながら砕けちった破片を避けながらよろよろと歩く。

生きている人は周りを見る限り見当たらない。

血の匂いが鼻をつく。

猛烈な吐き気が込み上げる。

足が崩れその場にうずくまる。

「うっ…うっ…」

口元を押さえながら吐き気をおさえる。

目から冷たいものが頬をつたい落ちる。

「うっ…うっ…げほっ…」

泣きながら、吐き気をこらえる。

うずくまっていると、残骸を踏み潰す音が聞こえる。

グシャッ…バキッ…

その音がこちらに近づいてくる。

「うっ…うっ…だれ?」

顔をあげ音がする方を見る。

ギィ…ギィ…

機械音が聞こえる。

無機質な声が音のほうから聞こえる。

「生体反応を確認。」

目の前にあった残骸が上に移動する。

「……。」

綺麗なお人形さんが残骸を持ち上げこちらを見下ろしている。

身体が震える。

「対象を保護。」

手に持っていたコンクリートの破片を横に放り投げる。

ガシャン…

綺麗なお人形さんは青い色の瞳に赤い炎を反射している。

赤と青が瞳の中で混じり輝く。

頭が痛い。身体中が震える。吐き気が込み上げる。

「……。」
口を手のひらで更に強く抑える。

「残骸の破壊、対象保護を遂行。」

ザシュザシュ…

足音が近づいてくる。

「保護行動を妨害する対象物を破壊。」

ガシャン!!

ジュウ…ガキッ…!!

耳をおさえ、目を閉じる。

「残骸破壊完了。」

ザシュザシュ…

足音が目の前で止まる。

震える。

「保護。」

冷たい感触が頬に伝わる。

顔をあげる。

「大丈夫。安心。」

冷たい感触はお人形さんの手のひら。

お人形さんはぼくの目線に顔を合わせている。

「うっ…うっ…」

お人形さんの顔がにじむ。

「安心。安心。」

お人形さんはゆっくりとぼくを抱き上げる。

「うっ…げほっ。」

吐き気がひどくなる。

「保護完了。生体の外的損傷は軽度。内的損傷は重度。年齢は5〜8歳。」

ぼくを抱いて歩きながら、お人形さんはつぶやいている。

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