少年と犬?
少年と犬の話し。
気がついたときには僕は、オレンジ色をした犬と一緒だった。
うんと小さい頃から一緒だったのは、懐かしい記憶と数ある写真達が物語っている。
オレンジ色で陽の光りを浴びるとキラキラと黄金色に輝くフサフサの毛並み。
いつも太陽の臭いがするねと、僕は抱きしめた。
茶色い瞳が優しく細められる。
いつも、僕等は一緒だった。
両親が亡くなってしまってからは二人ぼっちだったのだ。
とっても、とっても悲しくて寂しかった。声を大にして涙が枯れる迄涙を流せば傍らに寄って来ては、僕の涙を吸い込んで行ってくれる。
きっと彼が居なければ、僕は今こうして居られなかっただろう。
「ありがとう・・・」
僕等は一日の24時間を殆ど共に過ごす。
本当ならば、離れ離れになってしまう所だったのだ。
父と母が共に交通自己を起こして亡くなった日の事はよく覚えている。父が、散々欲しがったマイクロバスみたいな乗用車と母が欲しがった小回りの利くタイプの車を足して二で割った様な車は結局ごく普通の有り触れた物に決まった。
散々文句を言っていた父も、首を捻っていた母も乗り込んでしまえば、笑顔になるから大人って奴は不思議なものだと、僕はしみじみと思う。
そんな訳で、父は意気揚々と運転席に座り、母は助手席へと乗り込む。中学生になって今更、家族で外出と言うのは、中々気恥ずかしいものもあるが、家族愛を大切にする、この両親には逆らえ無い。やれ、休日だと言えば遠出に出かけるプランをいくつも挙げてくるし。平日ならば夕方から母は夕食作りに没頭し、父は駆け込み乗車の様な忙し無さで帰路を急ぎ、食卓に滑り込むのだから。
そんな訳で今回も、少し遠めのショッピングモールへと車を走らせていた。時には父や母の青春時代を桜花させた古い歌謡曲や談笑に華を咲かせながら、家族3人+一匹を載せてスズキ製のワゴンRは道路をスイスイと泳いで行く。
どれ程の距離を走ったのだろうか、気がつくと甲高いブレーキの音と不快な摩擦音が響いていた。目に焼き付いたのは父が母を庇うようにエアクッションの間を縫い母を抱きしめ母の手は後部座席、つまり僕の方に向けられ伸びていた。耳に残るのはサイレンの音と犬の悲しそうな魂を削る程の遠吠えだった。
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