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破れ鍋にハイヒール

[295]  kama-sideD  2006-03-14投稿
act.−1

「捨てられて当然、って思ってるだろ。」


薄汚れた灰色の床にベタリと座り込んだまま、その男は呟いた。
俯いたその表情は垂れた頬の辺りまでの流さの髪に隠されて見えないけど、その顔がひどく端正なことは知っている。
先程嫌というほど見たから。

「ひどく綺麗な男だな」それが彼への印象だった。
男の人に「綺麗」って言葉が正しいのかは解らないけど、実際そう思ったんだから仕方ない。

物憂げな瞳とか、スッと通った鼻筋とか細い顎とか。

そして柔らかな赤色の髪が、なにより印象的だった。


そんな彼が、うなだれて、打ちひしがれた様子で床に臥している。
トーンの低い灰色に、彼の赤い頭が浮いて見える。それは一種異様な物の様に。

ポツリ

灰色が更に薄黒くそまった。
続いて一滴、二滴。

泣いているのかな。

そう何処醒めた頭で思いながら、同時に、無性にその表情が見たいという思いが腹の底から沸き上がってきた。
泣いて、いる。

その綺麗な顔で
うちひしがれて
男の人が


−−−−男の恋人に捨てられたといって


彼は、言うなら「友達の恋敵」だった。
彼氏を取られたと、そう友人が泣きついて来たのは先月の話しだ。
彼女が泣きながら訴えた話しは流石に驚いたけれど、要約すれば彼氏に男の恋人が出来たということ。
それが、彼だった。


フ、と息の漏れる音が響いた。
それは溜息なのか、はたまた鳴咽だったのかは解らなかったけど、それが彼のあの赤い唇から漏れたものだと思うだけでゾクゾクとしたものが肌を舞う。
「友人の敵」だった筈の彼に、だけどこの時抱いていたのは、それは間違うこと無き「好意」だった。


だから、逆に問い掛けた。
その海面に散った花びらみたいな、その赤い髪に向かって。


「なら、捨てられて当然‥って思ってるの?」


続く..

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